もっぱら現代は、インスリン抵抗性との戦いではないか?
糖尿病だけの話ではない。肥満、高血圧、脂肪肝、高尿酸血症、動脈硬化。
現代人が抱える病気を眺めていると、その背後にはいつも、効きにくくなったインスリンと、それを補おうとして過剰に分泌されるインスリンの姿がある。
そして最近、AGA――男性型脱毛症にも、インスリン抵抗性が関係しているらしいと知った。
痩せなきゃ
もちろん、AGAの主役は遺伝とアンドロゲンである。
だから、太っている人が必ず禿げるわけでもないし、痩せている人が禿げないわけでもない。
それでも、インスリン抵抗性がその傾向を後ろから押している可能性はある。
インスリンが効きにくくなると、身体はさらに多くのインスリンを分泌する。高インスリン血症は、IGF-1やアンドロゲンの代謝、慢性炎症、酸化ストレス、血管内皮機能など、さまざまな経路に影響する。
つまりAGAは、頭皮だけで完結する現象ではないのかもしれない。
頭頂部の毛が細くなることと、腹囲が増えること。血糖が上がることと、脂肪肝になること。
一見まったく別の出来事に見えて、実は同じ代謝の乱れから伸びた枝なのかもしれない。
考えてみれば、現代の生活はインスリン抵抗性を作る方向に、あまりにもよくできている。
腹が減る前に食べる。歩かずに移動する。夜遅くまで光を浴びる。睡眠時間を削る。ストレスがかかれば甘いものを食べ、疲れればさらに動かなくなる。身体は飢餓には強くても、過剰な栄養が絶えず流れ込む環境には、まだ十分適応していない。
だから、痩せるという行為は、単に体重計の数字を減らすことではない。
筋肉を動かし、食べすぎを抑え、睡眠を整える。それによってインスリンが再び効きやすい身体に戻っていく。脂肪肝が改善し、血圧が下がり、炎症や酸化ストレスも減っていく。
その結果として、髪にも何らかの変化が起きても不思議ではない。
身体は臓器ごとに独立しているわけではない。肝臓、筋肉、脂肪組織、血管、皮膚、そして毛包は、同じ血液とホルモンの中で生きている。代謝が悪くなれば、その影響は検査値に出る前から、眠気や空腹感、肌、髪といった場所に現れているのかもしれない。
AGAを治すために痩せればよい、というほど単純ではない。進行したAGAには、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど、毛包に直接働きかける治療が必要になる。
だが、AGAが身体からの代謝的な警告である可能性はある。
実際に想像ではなくて、論文も調べるとある
もっぱら現代は、インスリン抵抗性との戦いである。
そしてその戦場は、血糖値の中だけではない。
腹にも、肝臓にも、血管にも、そして頭の上にもある、のかもしれない


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