「寝る技術」を、論文で確認してみる

以前、机の上でうつ伏せになって昼寝をする、という話を書いた。

布団には行かない。
ベッドにも横にならない。
机に座ったまま、腕を枕にして、そのまま突っ伏して寝る。

この方法だと、目覚ましをかけなくても、だいたい15分から25分くらいで自然に目が覚める。

少し寝にくい。
首や腕も少ししんどい。
しかし、その不自由さがあるからこそ、1時間も2時間も寝続けることがない。

眠りやすくすることだけが、寝る技術ではない。
寝すぎないように眠ることも1つの技術である

そう書いた。

ただし、これはあくまで自分の経験である。

本当に15分から25分程度の昼寝がよいのか。
短い昼寝で頭は回復するのか。
30分以上寝ない方がよいというのは本当なのか。

今回は、自分の「寝る技術」を論文で確認してみることにした。

10分の昼寝は、かなり優秀だった

昼寝の時間を比較した有名な研究がある。

夜間の睡眠を少し制限したあと、参加者に5分、10分、20分、30分の昼寝をしてもらい、その後の眠気、疲労感、認知機能などを比較した研究である。

この研究では、10分の昼寝が、全体として最も効率のよい昼寝だった[1]。

10分昼寝では、起きてすぐに眠気や疲労感が改善し、認知課題の成績もよくなった。

効果の一部は、昼寝後2時間以上持続した。

一方、5分では短すぎて効果が小さかった。

20分昼寝では、起床直後よりも、しばらく時間がたってから効果が現れた。

30分昼寝では、その後の改善効果は認められたものの、起床直後には一時的なパフォーマンス低下がみられた[1]。

つまり、短い昼寝は単なる「寝た気がする」という気分の問題ではない。

10分程度でも、眠気や疲労、注意力を実際に改善する可能性がある。

20分の昼寝も、午後の覚醒を保つ

別の研究では、昼に20分間の仮眠をとった場合の効果が調べられている。

20分昼寝をした人では、昼寝をしなかった場合と比べて、主観的な眠気や課題の成績、課題に対する自信などが改善した。

脳波からも、日中の覚醒度を維持する効果が示唆された[2]。

したがって、自分が自然に起きる15分から25分という時間は、少なくとも大きく外れてはいないらしい。

研究によって最適な時間は多少異なるが、10分から20分程度の短時間仮眠には、午後の眠気を減らし、注意力や作業効率を回復させる効果がありそうである。

なぜ30分寝ると、起きたあとにぼんやりするのか

昼寝の難しいところは、長く寝れば寝るほどよいわけではないことだ。

起きた直後に、頭が重い。
自分がどこにいるのか、一瞬分からない。
目は開いているが、脳がまだ起動していない。

この状態は、睡眠慣性と呼ばれる。

睡眠慣性とは、睡眠から目覚めた直後に起こる、一時的な眠気や認知機能の低下である[3]。

昼寝についての総説では、5分から15分程度の短い昼寝では、起床後ほぼすぐに効果が現れ、その効果が1時間から3時間程度続くとされている。

一方、30分を超える昼寝では、その後の認知機能改善が長く続く可能性があるものの、起床直後には睡眠慣性によるパフォーマンス低下が起こりやすい[3]。

これはよく自分の経験でも非常にわかる

睡眠慣性の程度は、昼寝の長さだけで決まるわけではない。

目覚める前にどの程度深く眠っていたか、もともとの睡眠不足がどの程度あるか、体内時計上のどの時間帯に目覚めたかによっても変化する[4]。

昼寝の目的が「午後の仕事にすぐ戻ること」であれば、深く眠りすぎない方が都合がよい。

では、机にうつ伏せで寝ることに根拠はあるのか

ここは正直に言うと、今回確認した範囲では、机にうつ伏せで寝ること自体が最も優れていると証明した論文は見つからなかった

昼寝の研究の多くは、ベッドやリクライニングできる椅子など、ある程度眠りやすい環境で行われている。

したがって、

「不自由な姿勢で寝ると、自然に15分から25分で起きられる」

という部分は、現時点では自分の経験であり、科学的に確立した方法とはいえない。

ただし、理屈としては悪くないと思っている

自分の場合、布団に入ると完全な睡眠モードになってしまう。
机では、眠れるけれど、熟睡し続けるほど快適ではない。

つまり、机に突っ伏す姿勢が、睡眠の質を高めているというより、昼寝時間が長くなりすぎるのを物理的に防いでいるのだと思う。

研究で効果が示されているのは、あくまで短時間の昼寝である。

机で寝ることは、その短時間を実現するための、自分なりの装置なのである。

目覚ましをかけない方がよいのか

目覚ましを使わない方が優れている、という根拠も今のところない。

むしろ研究では、昼寝時間を一定に管理するため、決められた時間に参加者を起こしていることが多い。

自分の場合は、机の上で寝ることによって、目覚ましなしでも自然に15分から25分で起きる。

これは便利ではあるが、毎回必ず同じ時間で起きられるとは限らない。

睡眠不足が強い日には、普段よりも早く深い睡眠に入り、短い昼寝でも起床後にぼんやりする可能性がある。睡眠慣性は、事前の睡眠不足によって強くなることが知られている[4]。

絶対に寝過ごせない日には、机で寝るとしても、保険としてアラームをかけた方が安全だろう。

自分の「寝る技術」を採点すると

以前の日記に書いた方法を、論文に照らして採点すると、次のようになる。

まず、15分から25分程度で起きるという点。

これは、かなりよい。

特に10分から20分程度の昼寝には、眠気、疲労感、注意力、認知機能を改善する根拠がある[1–3]。

次に、長く寝すぎないという点。

これもよい。

30分を超える昼寝では、起床直後に睡眠慣性が出る可能性がある。起きてすぐ仕事に戻りたい場合、長時間の昼寝はかえって不利になることがある[3、4]。

そして、机にうつ伏せで寝るという点。

これは、直接的な科学的根拠はない。

ただし、自分にとって机が「眠れるけれど、寝続けられない場所」として機能しているなら、短時間仮眠を実現する方法としては合理的である。

結論として、以前書いた「寝る技術」は、半分は論文で裏づけられ、半分は自分専用の工夫だった。

寝る技術とは、起きる技術である

夜の睡眠では、眠りやすい環境をつくることが大切である。

静かな部屋。
暗い照明。
快適な布団。
適切な室温。

しかし、昼寝では事情が違う。

快適すぎると、起きられない。

昼寝に必要なのは、よく眠れる環境ではなく、ちょうどよく眠り、ちょうどよく起きられる環境なのかもしれない。

机の上で、少し不自由な姿勢で眠る。

10分、15分、長くても25分くらい。

そこで自然に目が覚めたら、布団へ移動せず、そのまま立ち上がる。

短時間だけ脳を休ませ、深く眠りすぎる前に戻ってくる。

寝る技術とは、長く眠る技術ではない。

必要なだけ眠り、必要な時間に戻ってくる技術である。

そして昼寝に限っていえば、寝る技術とは、ほとんど起きる技術なのだと思う。


参考文献

  1. Brooks A, Lack L. A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: which nap duration is most recuperative? Sleep. 2006;29(6):831-840. doi:10.1093/sleep/29.6.831.
  2. Hayashi M, Watanabe M, Hori T. The effects of a 20-min nap at noon on sleepiness, performance and EEG activity. Int J Psychophysiol. 1999;32(2):173-180. doi:10.1016/S0167-8760(99)00009-4.
  3. Lovato N, Lack L. The effects of napping on cognitive functioning. Prog Brain Res. 2010;185:155-166. doi:10.1016/B978-0-444-53702-7.00009-9.
  4. Hilditch CJ, McHill AW. Sleep inertia: current insights. Nat Sci Sleep. 2019;11:155-165. doi:10.2147/NSS.S188911.

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