「夜、何回もトイレに起きるんです」よく聞く訴えである。
夜間頻尿と聞くと、漢方ならまず八味地黄丸が頭に浮かぶ。
冷えや腰のだるさ、排尿力の低下などを伴う高齢者では、たしかによく使われる薬だ。
ただ、個人的には、
「それ、過活動膀胱ならベオーバじゃないの?」
とも思っている
ベオーバ(一般名:ビベグロン)はβ3アドレナリン受容体作動薬で、適応は「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁」。
つまり、急に尿意が来て我慢しにくい、昼も夜も何度もトイレに行く、といったOAB(過活動膀胱)型の頻尿なら、かなり理屈に合った薬である。
ただし、ここで大事なのは、
「夜間頻尿=OAB」ではない
ということ。
夜間頻尿には、大きく分けると、
- 夜につくられる尿そのものが多い「夜間多尿」
- 膀胱に尿を十分ためられない「蓄尿障害」
- 睡眠障害
- 前立腺肥大などによる排尿障害
など、いろいろな原因がある。
日本泌尿器科学会も、夜間頻尿では排尿日誌などを使って「夜間の尿量が多いのか」「1回の排尿量が少ないのか」を見ることが原因を考えるうえで重要としている。
OABによる膀胱容量低下ならβ3作動薬が治療選択肢になるが、夜間多尿なら話は別である。
さらに男性の場合、ややこしいのが前立腺肥大症。
前立腺肥大で尿の出口が狭くなっている人に、頻尿があるからとベオーバだけを出せばいいわけではない。
ベオーバの添付文書にも、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞疾患を合併している場合には、その治療を優先するよう記載されている。
だから、
尿が出にくい・尿勢が弱い → 前立腺肥大を考える。
一方、
急に尿意が来る・我慢しにくい・少量ずつ何度も行く → OABを考える。
そして前立腺肥大症があっても、治療後にOAB症状が残れば、β3作動薬を追加するという考え方になるか
結局、「夜間頻尿に何を出すか」というより、
なぜ夜中にトイレに行っているのか?
を考えないといけない。
八味地黄丸が悪いわけではない。
ただ、患者さんの話を聞いていて、
「夜も何度も行く」「昼間も頻尿」「急に尿意が来て我慢できない」
というのであれば、個人的にはまず、
それならベオーバでええんちゃうか
と思ってしまうのである。


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