今日は Wellens症候群 について勉強しようと思う
この診断の患者さんには出会ったことはない
最初は、心電図の細かいパターンのひとつかなと思っていた。
Wellens症候群の特徴は、簡単に言うと、
胸痛が治まった後の心電図に、特徴的なT波異常が出ることである。
典型的には、V2〜V3 という胸の前側の誘導に変化が出る。
代表的な形は2つある。
ひとつは、二相性T波。
T波が一度上に向かってから、後半で下に沈むような形を示す。
もうひとつは、深い陰性T波。
V2〜V3を中心に、左右対称に近い深いT波の陰転がみられる。
この所見が大事なのは、単なる波形の変化ではなく、
左前下行枝、特に近位部の高度狭窄を示唆するからである。
左前下行枝は、心臓の前壁や中隔を広く栄養している重要な血管である。
ここが強く狭くなっていると、今は症状が落ち着いていても、その後に広い範囲の心筋梗塞へ進む危険がある。
Wellens症候群で怖いのは、患者さんが一見落ち着いて見えることと思われる
胸痛はすでに治まっている。
検査値も正常、あるいは軽度の異常にとどまることがある。
心電図でも、派手な変化が出ているとは限らない。
そのため、
「今は痛くないから大丈夫そう」
「検査値もそこまで悪くない」
と思ってしまう危険がある。
しかしWellens症候群では、実際には危険な冠動脈病変が残っている可能性がある。
一度血流が悪くなり、その後自然に血流が戻ったことで胸痛が治まっているだけかもしれない。
つまり、症状が消えたことは安心材料とは限らない。
特に重要なのは、運動負荷試験をしてはいけないという点である。
胸痛が治まっていると、
「負荷をかけて虚血が出るか確認しよう」
と考えたくなるかもしれない。
しかしWellens症候群では、近位左前下行枝に危険な狭窄が残っている可能性がある。
そこで心臓に負荷をかけると、大きな心筋梗塞を誘発する危険がある。
診断で意識するポイントは、
- 最近、狭心症らしい胸痛発作がある
- 心電図を取った時には胸痛が治まっていることが多い
- V2〜V3を中心に二相性T波、または深い陰性T波がある
- 前胸部誘導に病的Q波がない
- R波の進行が保たれている
- 心筋逸脱酵素は正常〜軽度上昇のことがある
という点である。
また、T波が陰転しているからといって、すべてがWellens症候群というわけではない。
左室肥大、肺塞栓、心筋炎、たこつぼ心筋症、脳血管障害などでもT波異常は出る。
だから、心電図だけで決めつけるのではなく、
胸痛の病歴、T波異常の場所、検査値、全体の臨床像を合わせて判断する必要がある。
今日の学びをまとめると、
Wellens症候群は、胸痛が治まった後にV2〜V3の二相性T波または深い陰性T波が出ることで、近位左前下行枝の高度狭窄を疑う重要なサインである。
検査値が軽くても、症状が落ち着いていても危険度は高く、運動負荷試験ではなく早期の冠動脈評価が必要である。
Wellens症候群は、
「症状が落ち着いたから大丈夫」と考えてはいけない
ということを教えてくれる病態だと思った。
繰り返すECGの重要性を改めて認識する


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