思春期は起立性調節障害(OD)の患者が多い。朝起きられない、倦怠感が強い、頭痛がする、学校に行けないといった症状で受診する。
ODでは生活習慣の改善や水分・塩分摂取に加え、状態に応じた運動療法も勧められる。
しかし、運動をするとかえって体調が悪化する患者もいる。
そこで気になるのが、慢性疲労症候群(ME/CFS)である。
ME/CFSには2003年のカナダ基準(Canadian Consensus Criteria)や2015年のIOM基準などがある。
ただし、診断基準に含まれる疲労、睡眠障害、認知機能低下、自律神経症状などは非特異的である
また、現時点では診断を確定できる特異的な血液検査やバイオマーカーもない。
そのため、病歴や症状の経過を確認し、他の疾患を除外しながら診断することになる。
英国NICEの2021年ガイドラインでは、小児・思春期において4週間以上の特徴的な症状が続けばME/CFSを疑い、3か月以上持続して他の疾患では説明できない場合に診断する。
一方、IOM基準では6か月以上の持続が必要とされる。
知らんと診断できひんし、なかなか難しいよな
ODとの鑑別で重要なのはPEM
ME/CFSを疑ううえで、最も注目したいのがPEM(Post-exertional malaise:労作後の症状悪化)である。
PEMは身体活動だけでなく、勉強などの認知的活動や精神的負荷でも生じる。
活動直後とは限らず、数時間後から翌日に症状が悪化し、回復まで数日以上かかることもある。
例えば、学校に行った翌日は一日中寝込んでしまう、短時間の外出でも翌日から数日間体調が悪い、といった経過である。
ODでも運動時の頻脈やめまい、倦怠感は起こる。しかし、起立に関連した症状が主体で、座位や臥位で改善する場合と、活動後に遅れて全身症状が悪化するPEMでは、病態が異なる可能性がある。
もちろん、ODとME/CFSは併存することもあるため、完全に区別できるものではない。
運動療法で悪化する場合はどうするか
ODでは運動療法が治療の一つとして考えられるが、ME/CFSでは注意が必要になる。
NICEガイドラインでは、ME/CFS患者に対して運動量を機械的に増やしていく段階的運動療法は推奨されていない。PEMによって病状が悪化する可能性があるためである。
したがって、ODと診断して運動療法を行った結果、翌日以降に著しい倦怠感が出現したり、数日間寝込むようになったりする場合には、ME/CFSを鑑別として考える必要がある。
これは重要よな
ただし、運動による悪化だけでME/CFSとは診断できない。ODそのもののコントロール不良や、その他の運動不耐の原因も評価しなければならない・・・
また、ME/CFSを疑うために、あえて運動負荷をかける必要もない。
診断がつかなくても介入できる
ME/CFSに対する確立した根治療法はないが、症状に対する介入は可能である。
特に重要なのが、PEMを起こさない範囲で活動量を調整する「Pacing(ペーシング)」である。
一方、起立不耐、睡眠障害、頭痛などを合併している場合には、それぞれに対する治療を検討する。
小児では学校生活への影響も大きいため、登校時間や学習量の調整も重要になる。
まとめ
ODとME/CFSの鑑別は簡単ではない。
しかし、ODとして治療している患者の中で、運動や登校によって翌日以降に症状が悪化し、回復まで長時間かかる場合には、ME/CFSを想起する必要があると思う。
今後、ODの患者を診察する際には、単に「運動すると疲れるか」ではなく、「運動や登校の翌日にどうなるか」「回復までどのくらいかかるか」を確認したい。
参考文献
- Carruthers BM, et al. Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: Clinical Working Case Definition, Diagnostic and Treatment Protocols. J Chronic Fatigue Syndr. 2003.
- Institute of Medicine. *Beyond Myalgic Encephalomyelitis


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