最初は、市販後に重篤な肝障害や死亡例が報告されたという安全性の問題として見ていた。
しかし、その後に見えてきた構図はさらに重い。
承認の根拠となったADVOCATE試験の論文がNEJMで撤回されたのである。
NEJMでも撤回とかあるんか
薬の副作用は、どれほど注意していても市販後に初めて明らかになることがある。
特にANCA関連血管炎のように疾患自体が重く、リツキシマブやシクロホスファミド、ステロイドを組み合わせて治療する領域では、有害事象の評価も単純ではない。死亡例があるからといって、すべてを薬剤のせいと即断することはできない。
国内では、タブネオス投与後に胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害が報告され、死亡例も20例に上るとされている。
厚生労働省も、市販後に死亡例を含む重篤な肝機能障害の報告が集積し、因果関係が否定できない症例が確認されたとして、添付文書に胆管消失症候群を追記し、さらに警告として肝機能障害への注意喚起を強めている。
投与開始後3か月以内に発現する例が多いという点も、臨床的にはかなり怖い
しかし、今回の件はそこにとどまらない。安全性の懸念に加えて、有効性を支えるはずだった臨床試験データの信頼性に疑義が生じ、ついには主要論文が撤回された。
これは単なる「副作用が多い薬」という話ではなく、薬のベネフィットをどう評価していたのか、その土台自体が揺らいでいるということである。
安全性に問題があっても、有効性が明確であれば、リスクを理解したうえで使う場面はある。逆に、有効性の根拠が崩れるなら、患者に負わせるリスクの意味はまったく変わってしまう。
新薬は希望である。ステロイドを減らせるかもしれない、既存治療の負担を下げられるかもしれない、そういう期待があるからこそ、医療者も患者も新しい薬に向き合う。
ディオバン事件のときの恐怖は、薬そのものだけではない。
論文、企業、専門家、ガイドライン、その連鎖が、根元から揺らぐことだった。
今回のタブネオスの件にも、同じ種類の怖さがある。


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