急性虫垂炎は、見逃したくない疾患の一つです。
虫垂炎の診断には、腹痛の経過や身体所見、血液検査、腹部超音波検査などを組み合わせますが、診断を補助するスコアとして、PASスコア(Pediatric Appendicitis Score)とAlvaradoスコアがあります。
どちらも10点満点で虫垂炎の可能性を評価しますが、評価項目には少し違いがあります。
1.Alvaradoスコアとは?
Alvaradoスコアは、1986年に報告された急性虫垂炎の診断スコアです。
成人・小児の両方で使用され、症状、身体所見、血液検査の8項目から構成されています。
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| 右下腹部への痛みの移動 | 1 |
| 食欲不振 | 1 |
| 悪心・嘔吐 | 1 |
| 右下腹部圧痛 | 2 |
| 反跳痛 | 1 |
| 体温上昇(37.3℃以上) | 1 |
| 白血球増多(10,000/μL超) | 2 |
| 好中球左方移動 | 1 |
| 合計 | 10 |
一般に、スコアが高いほど虫垂炎の可能性が高くなります。
2.PASスコアとは?
PASスコアは、2002年にSamuelによって報告された、小児向けの虫垂炎診断スコアです。
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| 右下腹部への痛みの移動 | 1 |
| 食欲不振 | 1 |
| 悪心・嘔吐 | 1 |
| 右下腹部圧痛 | 2 |
| 咳・跳躍・打診による痛み | 2 |
| 発熱(38℃以上) | 1 |
| 白血球増多(10,000/μL超) | 1 |
| 好中球増多(75%超) | 1 |
| 合計 | 10 |
PASでは、反跳痛の代わりに、咳やジャンプ、打診によって誘発される痛みを評価します。
3.PASとAlvaradoの違い
両者の大きな違いは、身体所見と白血球数の配点です。
| 比較項目 | Alvarado | PAS |
|---|---|---|
| 主な対象 | 成人・小児 | 小児 |
| 右下腹部圧痛 | 2点 | 2点 |
| 反跳痛 | 1点 | なし |
| 咳・跳躍・打診による痛み | なし | 2点 |
| 白血球増多 | 2点 | 1点 |
| 発熱の基準 | 37.3℃以上 | 38℃以上 |
| 満点 | 10点 | 10点 |
PASでは、腹膜刺激症状を小児でも評価しやすい方法で確認できることが特徴です。
例えば、診察室でジャンプしてもらい、右下腹部に痛みが誘発されるかを確認する方法があります。
ただし、ジャンプできるから虫垂炎ではない、というわけではありません。
4.何点以上で虫垂炎を疑う?
臨床では、PASについて以下のような分類が用いられます。
- 0〜3点:低リスク
- 4〜6点:中間リスク
- 7〜10点:高リスク
Alvaradoスコアでも、低スコアでは虫垂炎の可能性が低く、高スコアでは虫垂炎を疑います。
ただし、どちらのスコアも確定診断を目的としたものではありません。
特に中間リスクでは、腹部超音波検査や経時的な診察が重要です。
5.低年齢児では注意が必要
PASは小児向けに開発されたスコアですが、特に4歳未満の低年齢児では注意が必要です。
低年齢児では、痛みの部位や移動を正確に説明できず、身体診察への協力も難しい場合があります。
また、典型的な右下腹部痛を示さないこともあります。
そのため、スコアが低くても虫垂炎を否定することはできません。
まとめ
PASスコアとAlvaradoスコアは、どちらも急性虫垂炎の診断を補助する10点満点のスコアです。
Alvaradoスコアは白血球増多や反跳痛を重視し、PASスコアは小児で評価しやすい咳・跳躍・打診による痛みを重視しています。
小児科外来ではPASが使いやすい場面もありますが、いずれも診断の補助にすぎません。
特に低年齢児では、スコアに頼りすぎず、病歴、繰り返しの身体診察、腹部超音波検査を組み合わせて判断することが重要です。


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