モンテルカストと悪夢の関係

モンテルカストという薬がある。

喘息やアレルギー性鼻炎で使われる薬で、小児領域ではかなり身近な薬である。

ただ、この薬には精神神経系の副作用が知られている。

日本の添付文書でも、精神神経系の副作用として、異夢、易刺激性、情緒不安、不眠、幻覚、激越、夢遊症、失見当識、集中力低下、記憶障害、せん妄、強迫性症状などが記載されている。

悪夢については、海外でも以前から問題になっている。WHOの副作用データベースであるVigiBaseを用いた解析では、2020年5月までにモンテルカストが疑われた副作用報告25,120件のうち、精神症状を含む報告が32%あり、その中に悪夢の報告が1,118件含まれていた。悪夢の報告の約3分の2は小児で、特に5〜10歳が多かったとされている。

FDAも2020年に、モンテルカストの精神神経系副作用を警告している。特にアレルギー性鼻炎では、症状が軽く他の治療で対応できる場合には、利益がリスクを上回らない可能性があるとして、使用を慎重にするよう注意喚起している。

ここで難しいのは、小児の「悪夢」は見えにくいという点である。

大人なら「変な夢を見た」「怖い夢で起きた」と言える。しかし、小さい子どもではそれを言葉で説明できない。結果として、夜泣きが増えた、急に泣いて起きる、寝つきが悪くなった、夜中に何度も起きる、日中に不機嫌になった、という形で表れることがある。

もちろん、小児の夜泣きや睡眠障害は原因が多い。鼻づまり、咳、アトピーのかゆみ、発熱前、生活リズムの乱れ、保育園や学校でのストレスなど、薬以外でもいくらでも起こる。だから、「夜泣き=モンテルカストの副作用」とすぐに決めることはできない。

しかし、薬を始めてから明らかに悪夢らしい症状や夜泣きが増えた。中止すると落ち着いた。再開するとまた出た。こういう時間的な関係があれば、モンテルカストとの関連を考える価値は十分にある。VigiBaseの解析でも、多くの症例で内服開始から数日以内に悪夢が出現し、中止で改善した例や、再投与で再発した例が報告されている。

実際の診療では、「悪夢はありますか?」と聞くだけでは拾いにくいと思う

特に小さい子どもでは、保護者に対して、

「薬を始めてから、夜泣き、怖い夢のような起き方、寝つきの悪さ、途中で起きること、日中のイライラや不安定さは増えていませんか?」

と聞く方が実践的だと思う。

モンテルカストは便利な薬である。一方で、小児では副作用が大人のように言葉で訴えられるとは限らない。悪夢が「夜泣き」として見えている可能性がある。

副作用を知らないと、聞くこともできないので、処方する側としてはこの知識を持っておきたい。

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