PMDAから2026年6月に、「ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症、重篤な低血糖について」という注意喚起が出ていた。
以前もあったなと思い出す
ピボキシル系抗菌薬と低カルニチン血症の話自体は以前から知られていて、2012年にもPMDAから注意喚起が出ている。
それでも現在まで低頻度ながら副作用報告が続いているため、今回あらためて周知されたようだ。
対象となるのは、下記の抗菌薬。
- セフカペン ピボキシル(フロモックス)
- セフジトレン ピボキシル(メイアクト)
- セフテラム ピボキシル(トミロン)
- テビペネム ピボキシル(オラペネム)
など。
オラぺネムもやったんか・・・
そもそも、なぜカルニチンが減るのか
ピボキシル基を持つ薬剤は、体内で代謝されるとピバリン酸を生じる。
このピバリン酸がカルニチンと結合してピバロイルカルニチンとなり、尿中に排泄される。
つまり、
ピボキシル系抗菌薬を投与
→ ピバリン酸ができる
→ カルニチンと結合
→ 尿中へ排泄
→ 体内のカルニチンが減少
という流れ。
カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内へ運び、β酸化によってエネルギーを作るために必要になる。
特に絶食時には、
脂肪酸β酸化
→ ATP産生
→ ケトン体産生
→ 糖新生を維持
という仕組みが重要になる。
ところがカルニチンが不足すると脂肪酸をうまく利用できなくなり、低ケトン性低血糖を起こすことがある。
乳幼児ではもともとのカルニチン貯蔵量が少ないうえ、感染症になると食事やミルクの摂取量も低下する。
そこにピボキシル系抗菌薬が加わると、
感染症+摂取不良+カルニチン低下
が重なり、低血糖のリスクが高くなるということだろう。
長期投与だけ注意すればいいわけではない
今回のPMDAの資料で特に印象に残ったのが、
「投与開始翌日に低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖を起こした報告がある」
という点。
低カルニチン血症というと「長期間抗菌薬を飲み続けた場合」というイメージがあったが、必ずしもそうではないらしい。
先天性代謝異常にも注意
PMDAは、
血清カルニチンが低下する先天性代謝異常が判明している場合には投与しない
としている。
もともとカルニチン代謝に問題がある児に、さらにカルニチンを消費する薬剤を投与すれば危険なのは理解しやすい。
実際の診療では
もちろん、ピボキシル系抗菌薬を一切使わないという話ではない。
ただ小児、特に乳幼児では、
「本当に抗菌薬が必要なのか」
「この薬を選ぶ必要があるのか」
「必要以上に長期間処方していないか」
を考えることが大切。
さらに服用中に、
- 食事・哺乳がとれない
- ぐったりする
- 意識レベルが低下する
- 痙攣する
といった症状が出た場合には、感染症そのものだけでなく低血糖や低カルニチン血症も鑑別に入れる必要がある。
PMDAが14年ぶりにあらためて注意喚起しているということは、昔のことを知らない方々が新規に処方してるってことか?


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