免疫グロブリン投与後に発熱が続いて「DRESSの診断」になったという話を聞いた
そもそもDRESSとは何なのか。
DRESSは、
Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms
の略で、日本語では「好酸球増多と全身症状を伴う薬物反応」と訳される。
単なる薬疹ではなく、薬剤投与から少し時間がたってから、
発熱
広範囲の皮疹
顔面浮腫
好酸球増多
異型リンパ球
リンパ節腫脹
肝障害、腎障害、肺障害、心筋炎などの臓器障害
を起こす重症薬疹の一つである。
典型的には原因薬を開始してから2~8週間ほどして発症する。
結構前からの薬も要注意である
抗菌薬や抗てんかん薬など、少し前から使用している薬剤が原因となることが多い。原因薬を中止しても症状が長引いたり、いったん改善した後に再燃したりする点も、一般的な薬疹とは異なる。
発熱だけでもDRESSなのか
今回気になったのは、「皮疹がなく、発熱だけでもDRESSと呼べるのか」という点である。
DRESSでは、皮疹より先に発熱が出ることがある。また、まれには明らかな皮疹を欠き、臓器障害を主体として発症する症例も報告されている。
したがって、発症初期の段階で「今は熱だけだからDRESSではない」と完全に否定することはできない。
DRESSの診断に用いられるRegiSCARスコアでは、発熱だけでなく、リンパ節腫脹、好酸球増多、異型リンパ球、皮疹の範囲や特徴、臓器障害、ほかの原因疾患の除外などを総合して、no case、possible、probable、definiteに分類する。
つまり、発熱だけの段階では、
DRESSの初期かもしれないので経過を追う
ことはあっても、
発熱だけでDRESSと診断する
のは難しい。
常に薬剤性は念頭に置く必要がある
DRESSとDIHSは同じ病気なのか
日本では、DRESSとよく似た病態を
薬剤性過敏症症候群:DIHS(Drug-induced Hypersensitivity Syndrome)
と呼んでいる。
DRESSとDIHSは全く別の病気というより、現在ではおおむね同じ疾患スペクトラムに含まれる概念と考えられている。
ただし、診断基準と病気の捉え方が少し異なる。
DRESSは欧州を中心としたRegiSCAR基準で評価されることが多く、好酸球増多、異型リンパ球、皮疹、臓器障害などの臨床所見を点数化する。
一方、日本のDIHS診断基準では、
限られた原因薬
薬剤開始から通常3週間以上たって出現する皮疹
原因薬中止後も症状が遷延する
38℃以上の発熱
肝障害
白血球異常
リンパ節腫脹
HHV-6再活性化
などを重視する。
特に、HHV-6の再活性化を診断基準に含めることが、典型的DIHSの大きな特徴である。
HHV-6再活性化を確認できない場合でも、ほかの基準を満たせば非典型DIHSとされることがある。
DRESSとDIHSの実際の使い分け
大まかに考えると、
DRESS:臨床所見を広く拾い上げる概念
典型的DIHS:DRESSの中でも、特徴的な原因薬、遷延する経過、HHV-6再活性化などを備えた病型
と理解すると分かりやすい。か
DIHSの診断基準は比較的厳格であるため、RegiSCARではprobableまたはdefinite DRESSと評価されても、DIHS基準を満たさない症例がある。
逆に、典型的DIHSはDRESSの中でもウイルス再活性化を伴いやすく、より特徴的で重症な一群を表している可能性がある。
したがって、
HHV-6が陰性だからDRESSではない
とは言えない。
HHV-6再活性化は典型的DIHSでは重要だが、RegiSCARによるDRESS診断には必須ではない。
免疫グロブリン後の発熱をどう考えるか
免疫グロブリン投与後に発熱が続いている場合、IVIGそのものによるDRESSは非常に典型的な状況ではないと思う
まずは、
原疾患の炎症の遷延や再燃
感染症
IVIGに伴う一過性の副反応
無菌性髄膜炎
溶血
同時期に使用した抗菌薬やほかの薬剤によるdrug fever
DRESS/DIHSの初期
を鑑別する。
DRESSを考える際には、直前のIVIGだけを見るのではなく、発熱の2~8週間前までさかのぼって薬剤歴を確認する必要がある。
また、IVIG投与後は受動的に移入された抗体の影響でウイルス抗体検査の解釈が難しくなることがある。そのため、HHV-6再活性化を評価する場合は、抗体価だけでなくPCRなどを含めて考える必要がある。
最近ではDIHS/DRESSみたいな表記もあるらしい


コメント