片頭痛の治療は、大きく「頭痛発作が起こったときの治療」と「発作そのものを減らす予防治療」に分けて考えると分かりやすい。
① 発作時の治療
軽い発作であれば、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの鎮痛薬を使用する。
片頭痛らしい中等度以上の発作では、トリプタン製剤が代表的な治療薬となる。
スマトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタンなど複数の製剤があり、一つのトリプタンが効かなかったからといって、すべてのトリプタンが無効とは限らない。
大切なのは、トリプタンはあくまで「発作時に頭痛を止める薬」であり、片頭痛そのものを起こりにくくする予防薬ではないということ。
② 片頭痛の予防
発作の頻度が多い、頭痛のために仕事や日常生活への支障が大きい、急性期治療だけでは十分にコントロールできない、といった場合には予防治療を考える。
昔から使われている薬には、ロメリジン、プロプラノロール、アミトリプチリン、バルプロ酸、トピラマートなどがある。
中でもアミトリプチリン(トリプタノール)は、もとは三環系抗うつ薬であり、いわゆる抗不安薬ではない。しかし片頭痛の予防にも使用され、低用量から開始する。不眠や緊張型頭痛を伴っている場合には使いやすいこともある。一方で、眠気、口渇、便秘などの副作用には注意が必要である。
③ リボフラビン(ビタミンB2)という選択肢
薬とは少し違うアプローチとして、リボフラビン(ビタミンB2)も片頭痛予防に用いられる。
成人では400 mg/日がよく研究されている用量で、効果判定には少なくとも2~3か月程度必要とされる。通常の食事から摂取するビタミンB2とはかなり多い量になる。
大きな利点は副作用が比較的少ないこと。
ただし、通常の片頭痛予防薬ほどエビデンスが強いわけではなく、日本では片頭痛治療薬として保険処方する薬という位置づけでもない。
そのため、標準的な予防治療の代わりというより、選択肢の一つとして考えるのがよさそうだ。
④ CGRPとは何か
近年の片頭痛治療を理解するうえで重要なのが、CGRPという物質である。
CGRPは「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」という神経ペプチドで、片頭痛発作の際に三叉神経系から放出され、痛みの伝達や片頭痛発作の維持に重要な役割を果たしている。
片頭痛では、三叉神経系が活性化するとCGRPが放出され、それが血管や神経系に作用して痛みを増強すると考えられている。
つまり、
三叉神経の活性化 → CGRPの放出 → 痛みの伝達が増強 → 片頭痛発作
という流れの一部を抑えることで、片頭痛を起こりにくくするという考え方である。
⑤ CGRPを狙った注射薬
このCGRPの働きを抑えるために開発されたのが、CGRP関連抗体薬である。
日本では、ガルカネズマブ(エムガルティ)、フレマネズマブ(アジョビ)、エレヌマブ(アイモビーグ)などが使用できる。
エムガルティやアジョビはCGRPそのものを標的とする抗体で、アイモビーグはCGRP受容体を標的とする。これらは発作時に注射して頭痛を止める薬ではない。定期的に皮下注射することで、片頭痛発作を起こりにくくする「予防薬」である。
従来の予防薬で十分な効果が得られなかった場合や、副作用などで継続が難しい場合には有力な選択肢となる。
まとめ
片頭痛治療を整理すると、
発作が起きた → NSAIDsやトリプタンなどの急性期治療
発作を減らしたい → 予防治療
という二本立てになる。
予防治療には、従来からの内服薬に加えて、リボフラビンのような比較的取り入れやすい方法、そしてCGRPという片頭痛の病態に直接関わる物質を標的にした新しい治療まである。
「トリプタンが効かないから予防注射」という単純な関係ではなく、発作時の治療が十分なのか、そもそもの発作回数や生活への影響を減らす必要があるのかを分けて考えることが大切である。


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