食物アレルギーの検査は、昔は「卵が陽性」「牛乳が陽性」「小麦が陽性」というように、食品名で考えることが多かった。
でも実際には、卵や牛乳や小麦そのものが一つの物質なのではなく、その中にはいろいろなタンパク質が含まれている。アレルギーの原因になるのは、その中の特定のタンパク質である。
この、食品の中に含まれる個別のアレルゲンタンパク質を、アレルゲンコンポーネントという。
たとえば卵なら、有名なのはオボムコイド。これは熱に強いタンパク質なので、ここに反応している場合は、加熱卵でも症状が出やすいことがある。一方で、卵白IgEが陽性でも、実際にはしっかり加熱した卵なら食べられる子もいる。
牛乳ではカゼインが有名である。カゼインは熱に強く、加熱や加工をしても残りやすい。そのため、カゼインに反応している場合は、加熱ミルクや乳製品でも注意が必要になる。
小麦ではω-5グリアジンが有名である。これは小麦依存性運動誘発アナフィラキシーと関係する。小麦を食べただけでは大丈夫でも、その後に運動や入浴などが加わると症状が出ることがある。
ピーナッツではAra h 2が重要である。ピーナッツアレルギーの中でも、実際の症状や重症反応との関連が強いコンポーネントとして知られている。カシューナッツではAna o 3、クルミではJug r 1が有名で、これらもナッツ類の診療でよく意識される。
大豆ではGly m 4がある。これは花粉との交差反応に関係することがあり、花粉症の人が豆乳などで口のかゆみや喉の違和感を起こすようなケースで問題になることがある。
このように、同じ「食物アレルギー」でも、どのタンパク質に反応しているかで意味が変わる。
熱に強い成分なのか。
重症化と関係しやすい成分なのか。
花粉との交差反応なのか。
それによって、食べられる可能性や注意の仕方が変わってくる。
ただし、コンポーネント検査も万能ではない。IgEが陽性ということは、その成分に感作されているという意味であって、実際に食べて必ず症状が出るという意味ではない。
食物アレルギーで一番大切なのは、検査の数字だけではなく、実際に食べたときにどうだったかである。何を、どのくらい、どんな形で食べて、どんな症状が出たのか。それを丁寧に見る必要がある。
アレルゲンコンポーネントは、「陽性だから全部除去する」ための検査ではない。むしろ、食べられるものを見極め、不必要な除去を減らすための検査である。
食品名だけで大まかに見るのではなく、原因となるタンパク質まで見て考える。食物アレルギー診療は、そういう時代になってきている。


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