今までは栄養バランスガイドの説明をしてきました。
我が国で2020年にこのようなものも発表されているので改めてみていきましょう。
これを遵守すると健康に良いと思われますが、ダイエットに効果はあるのか?
今までの栄養バランスと大きく違うのは、主食の50-60%に根拠論文を記載しているところでしょうか。
食事摂取基準は長くてよくわからない方や、主食の50-60%の根拠などを探している方は、この記事を見れば参考になると思います。
また糖尿病や糖尿病の新薬にも少し触れています。
日々コスパの良い食事について考えています。
炭水化物について 痩せるために
食事摂取基準2020は長いので大事なところを見てみましょう。
その前にまず基本です。そもそも糖質が何で必要なのか?
糖質は脳や組織にブドウ糖としてエネルギー源を供給するエネルギーの源です。
脳以外の組織におけるブドウ糖の必要量は、100g/日くらいとなっています。
最低量かの判断は難しいですが、100g/日あったら致命的にはならないと思われます。
インスリン分泌過剰などの影響を受ける可能性はあり、個体差はありえます。
白米150gで糖質50gくらいですので、糖質100gは、お茶碗2杯くらいです。
ご飯2杯で最低限との糖分は賄えそうです。
白米が好きな人は自分の一杯がどれくらいの糖質か認識することは大事と思います。
糖質1gは4kcalなので、糖質100gでは400kcalです。
1日のtotalの kcalを2000kcalと設定するとして、最低限の糖質をとると仮定します。
その際の主食の割合は、糖質400kcal/2000kcalですので20%くらいになります。
主食20%でも、そんなに問題ないのでは、と単純には思ってしまいます。
主食 炭水化物の50-60%に根拠論文がある?
この食事摂取基準2020で書かれている項目で大事なところを見てみましょう
アメリカ人中年男女(45〜64 歳)15,428 人を 25 年間追跡して、炭水化物摂取量と 総死亡率との関連を検討した報告によると、炭水化物摂取量が50〜55% エネルギーであった集団で最も低い総死亡率と最も長い平均期待余命が観察された。
同時に、総死亡率の上昇と平均期待余命の短縮は炭水化物摂取が55〜65% エネルギーであった集団ではわずかであった。
(1) Seidelmann SB, et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis
これが主食50-60%の根拠である、となっています。
ちなみにこの論文が発表されたのは2018年ですので、それまではやはり明確な根拠はなかったものと思われます。
糖質制限いらないのでは? そういう意見は出てくると思います。
一瞬私も思いました。
主食50-60%が死亡率低い結果ですから、普通の糖質制限ではおそら1日20-40%くらいの糖質摂取量になると思われます。
長生きも大事ですが、目先の体型も気にしたいので糖質制限は続けます。笑
では、次に真にこの論文を参照にすべきか考えます。
炭水化物を減らす参考文献は信頼に値するのか?
この論文の発表で、主食50-60%の摂取は大義名文を得たのでしょうか?
他には、炭水化物(糖質)40%以下と70%以上のデータは良くないとの結論になっています。
少しややこしいですが、説明します。
メタアナリシス前( この論文は複数のデータを統合して、新しいデータを作成しています)のtableでは、患者数をそれぞれ、炭水化物消費量が平均37%、44%、49%、53%、61%の群に分けています。
この群それぞれの炭水化物摂取量は、ほぼ同じで1600kcal前後です。
%は違うけど、糖質の絶対値としてはほぼ同じということです。
これが重要なのは各群の1日のtotal kcalは全く違うということです。
具体的に説明しますと、
37%しか主食をとっていない群は、1600kcalで約4割ですから、total kcalは4000近い。
61%の群であれば1600程度であればだいたい、1600が6割ですからtotalは2800くらい。
ここに重要な点があります。1日摂取量が2800-4000kcalまでと幅がありすぎます。
我々の食事基準では、男性で1日2500kcalですので、4000kcalだと約1.5倍になります。
4000kcalって多くない?笑
さらに40%未満の炭水化物摂取者は、動物性脂肪とタンパク質の平均消費量が多く、植物性タンパク質と食物繊維の平均消費量が少ないとされています。
炭水化物摂取量40%未満の群は、総カロリー数としては他の群より多いし、さらに脂肪とタンパク質の摂取過剰の状態という群なのです。
何が言いたいかと言いますと、
炭水化物40%未満が悪いわけでなく、totalのkcal数が多いことが死亡率の上昇につながっている可能性がある、ということです。
総カロリー数を同等にした状態で主食の%を変えないと、真に炭水化物の影響かはわからないのではと思っています。
さらに、日本人に当てはめて良いのか?
糖尿病の説明をした上で、人種の違いを検討したいと思います。
糖尿病とは?
糖尿病とは、高血糖を呈する異常な炭水化物代謝疾患です。
インスリン抵抗性と、インスリン分泌の障害が原因となって生じます。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで血糖を一定に保つ働きがあります。
さらに、糖尿病は簡単に1型と2型に分けられます。
1型糖尿病は、膵臓β細胞の自己免疫破壊が原因です。
絶対的なインスリン低下により症状を発症します。
1型糖尿病は、成人の糖尿病の約5〜10パーセントと言われています。
2型糖尿病は、成人で最も多いタイプでだいたい90%くらいと言われています。
インスリン抵抗性増大と相対的なインスリン欠乏による高血糖を特徴とします。
1型と2型の違いは、最初からインスリンが出せるか出せないかです。
2型はインスリンを出せるけれども、もともと少ないか、良くない生活習慣によりインスリン抵抗性が悪くなる結果になります。
インスリン抵抗性とは、単純にはインスリンの量はあるけど、インスリンの効きが悪くなるものと思ってください。
実は糖尿病は増えている
きっと減っているのだろうと思いきや、少し前のデータになりますが厚生労働省の報告によると2019年に糖尿病患者は最多になっています。
出典-厚生労働省ホームページより、統計データからグラフ作成
少し驚きました。バランスガイドは平成17年開始です。
右肩下がりとは言わないまでも、横ばいでもない。
ここでこういう疑問はないでしょうか?
高齢者が増えただけちゃう?
肥満の人が増えてるんちゃうん?
ネット環境が良くなったし運動する人が年々減っているから増えてるんちゃう?
すごい大事な意見と思います。
データを見た時はそれに影響を与える因子を常に考慮しなければなりません。
肥満の人は変化してないです。
出典-厚生労働省ホームページ-
運動習慣も変化していないです。
出典-厚生労働省ホームページ-
高齢者は増えていると思います。
それなら死亡率は上昇し循環器疾患の罹患率も上昇するのではと思います。
2020年以前の食事バランスガイドで大まかなカロリーを設定することは有用と思います。
しかし糖尿病が増えていることを考えると、結局糖質過剰なのでは?と思ってします。
もちろんそれ以外のファクターもあるので一概に言えませんが。
もちろん環境は刻一刻と変化します、
食事が原因なのか、はたまた糖質を減らせば糖尿病は減少するのかはわかりません。
直感的に糖尿病は減っていない、ということは理解いただけると思います。
日本以外の糖質の摂取量は?
前回USAは穀物摂取制限をかなり推奨していると記載しましたが、糖尿病患者数は増加中のようです。
これはその目標が遵守されているのか?という点は気になります。
啓蒙しているけど順守できていないのか、はたまた順守した結果なのか?
USAはおそらく日本より貧富の差は激しいです。
栄養バランスに注意できる人っていうのはある一定の層かもしれません。
日本は日本食という文化のアドバンテージがありますが、
バランス良い食事に抵抗があるというか、なかなか習慣にならないのかもしれません。個人的に・・・
日本でアメリカのフードプレートをやってみて5年、10年の糖尿病のデータ推移を見たら、糖質制限が有用かの結論になり得るのでは?
もともと日本食という栄養バランスが取れているという土壌があります。
更に穀物の摂取量を減らすように啓蒙すれば、順守してくれるのでないでしょうか?
既存のの栄養バランスでは糖尿病患者は減らなかった。
食事だけの影響ではもちろんないと思うがそれは事実です。
糖尿病の人種差を考えたい
アジア人と欧米人では2型糖尿病の発症リスクが異なることはよく知られています。
白人とアジア人のインスリン抵抗性や分泌量を調べた報告があります。
出典-Insulin secretion capacity in the development from normal glucose tolerance to type 2 diabetes-
上記図は左がインスリン抵抗性で、右がインスリン初期分泌量と思ってください。
NGT: normal glucose toleranceは正常。
IGT: impaired glucose toleranceは耐糖能異常少しあり。
DM: diabetes mellitusは糖尿病
ぱっと見で日本人分泌能力低ない!?
明らかに差があるやんと思いました。
今まであんまり人種差を気にしてなかったです。
白人はインスリン抵抗性が高くなりますが、アジア人ではインスリン分泌能がそもそも低いです。
糖尿病には人種による病態の違いがある可能性があります。
上述ですが、50-60%炭水化物の群が長生きでしたよ、との論文を説明しました。
あの方達はどこの国の人だったのでしょうか? ほとんどアジア人はいません。
アメリカの方が炭水化物を50-60%で問題ないのは、アジア人よりも、そもそものインスリン分泌能力が高いので何とかなっているだけかもしれません。
インスリン分泌能力が低い我々だと同じ糖分摂取でも早々に膵臓に負担をかけ、障害を発生する可能性があるのではと考えています。
糖尿病の論文報告は日々更新されると思いますが、患者群がアジアなのか欧米なのかは少し確認しても良いかもしれません。
生活習慣の改善とインスリンが従来の治療になります。
その他にも様々な薬剤があるのですが、最近話題の比較的新らしいを薬を紹介します。
心不全にも効く? 糖尿病治療薬-SGLT2阻害薬-
治療薬としてはインスリンが使用されていますが、昨今はいろいろなタイプの治療薬があります。
Sodium-glucose co-transporter 2 (SGLT2) inhibitorsは2型糖尿病の治療薬になります。
SGLT2阻害薬が日本語名称です。
働きとしては血液中のグルコース(血糖)を尿中排泄してくれる優れものです。
最近では、心不全患者に有用との報告が続々出てきています。
SGLT2は近位尿細管に発現してグルコースの再吸収に関与しています。
要するにおしっこから血液に糖分を戻してます。
SGLT2阻害薬とはその働きを阻害しますので、グルコースの尿からの排泄を促し、血糖値の上昇を低下させる、と言うものになります。
効用に体重減少も含まれています。一応プラセボと比較試験した報告があるみたいです。(2)
理由はグルコースが尿中に多いことによる浸透圧利尿かとは思います。
体重減少は血糖が下がりインスリン分泌が減り脂質が減ることによるのかもしれませんが。
投薬禁忌としては
- 糖尿病1型
- 糖尿病2型でも腎機能が著しく低下している
- 糖尿病ケトアシドーシスの既往の方
この薬剤は初期治療でなくって既に治療中の方が対象になります。
2型糖尿病の大多数はまずは食事療法と減量と運動です。
心疾患に有用
血糖値自体の低下はそれほど強くありませんが、心疾患合併患者にはとても有用であるとの報告が多いです。3)
糖尿病改善の薬が様々ある中で、心不全治療に結構食い込んでいます。
心疾患を有する糖尿病患者でSGLT2 阻害薬とプラセボを比較すると
心疾患死亡率は72 versus 86 per 1000 person; odds ratio 0.82, 95% CI 0.70-0.95)
心不全での入院率は78 versus 116 per 1000 persons, odds ratio 0.65, 95% CI 0.59-0.71)
3)
SGLT2の方が優位に心疾患死亡率と心不全の入院率を下げています。
odds ratioはオッズ比で、ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度のことです。
糖尿病は万病のもとと言われており、やはり血管のダメージもありますので、心疾患にも関与してくるのだと思います。
最近では心不全にも早期に投与することも多くなっていますね。
注意点としては、長期的投与によるリスクはまだわかっていない点です。
比較的新しい薬ですので、それに関しては今後調べていく必要があります。
まとめ
2020の日本の食事摂取量基準を考察しました。
主食の50-60%の根拠論文が掲載されています。
ただ主食40%未満と50-60%群でtotalのkcal数が違うことは気になります。
従来の栄養バランスでは糖尿病の罹患者数は減っていません。
糖尿病で言えば人種差もあります。
アジア人は元からのインスリン分泌が低いので糖質が少ない方が体に優しい可能性があります。
最近の新薬のSGLT2を説明しました。
心疾患のイベントの低下に関係している有用な薬剤です。
以上参考になれば幸いです。
これまでの栄養バランスについての記事は下記を参照ください。
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