ワクチンで髄膜炎は減ったと効くが、GBS髄膜炎はまだあるようであるので、簡単にまとめる
母乳が原因になることはあるのか?
新生児や乳児のGBS感染(B群溶血性レンサ球菌感染)は、いまでも重要な細菌感染のひとつです。特に生後7日以降〜89日ごろまでに発症する遅発型GBS感染では、「母乳は関係あるのか?」という疑問がしばしば出てきます。
結論からいうと、母乳は“ありうる感染経路のひとつ”ではあるが、いつも主犯とは限らない、というのが現在のいちばん妥当な理解です。
実際、母乳中からGBSが検出される症例報告やレビューはありますが、同時に母乳栄養そのものが遅発型GBSのリスクを明確に上げるとはいえないという研究もあります。
2021年のPediatrics掲載研究では、breastfeeding was not associated with increased risk of LOGBS とされ、初回の遅発型GBSで routine に母乳培養を行うべきではない、という方向性も示されています。
過去のレビューでは、生乳サンプルでGBSが検出された割合は0〜2%程度とされており、「母乳中にしばしば大量にいる」というより、通常は多くないが、特定の状況では問題になると考えるほうが正確です。
問題になりやすいのは、遅発型GBS感染の再発例や、乳腺炎・乳汁うっ滞など母体側の乳房トラブルがある場合です。近年のレビューでも、GBSに汚染された母乳と関連した再発例が繰り返し報告されており、再発時には母乳の関与を強く疑うべきとされています。
ただし、ここでも単純ではありません。母乳からGBSが検出されたとしても、
- 乳腺内に菌がいたのか
- 乳頭や皮膚由来なのか
- あるいは赤ちゃんの口腔・咽頭のGBSが授乳を通じて乳管内に逆行したのか
このあたりは必ずしも明確でなく、「母乳そのものが悪い」と単純化できないのです。2022年のレビューでも、母乳関連の伝播仮説はある一方で、母子間の相互伝播や逆行性汚染の可能性が議論されています。
そのため臨床では、初回の遅発型GBS感染なら、まず児の治療を優先し、母乳を自動的に中止するわけではないという対応になります。
AAP Red Bookでも、遅発型GBS症例に対して routine に母乳培養を勧めていないとされています。
一方で、
- 再発した
- 乳腺炎がある
- 母乳培養でGBSが出た
- 児由来菌と母乳由来菌が一致しそう
といった状況では、母乳の関与を本格的に考えます。 - この場合は、母体の乳房所見を確認し、必要なら母乳培養を行い、一時的な直接授乳中止や加熱母乳の検討が行われることがあります。レビューでも、母乳からGBSが検出された場合には、一時的な授乳中断や母乳の加熱がしばしば提案されるとまとめられています。
要するに、「GBS感染と母乳」はゼロか100かの話ではありません。
母乳は新生児にとって基本的に非常に有益ですが、遅発型GBS、とくに再発例では例外的に感染経路となることがある。したがって、必要なのは「母乳は危険」と決めつけることではなく、どの症例で本当に母乳由来を疑うべきかを見極めることです。
参考文献
- American Academy of Pediatrics. Red Book: Group B Streptococcal Infections (2024–2027).
- Ching NS, et al. Breastfeeding and Risk of Late-Onset Group B Streptococcal Disease. Pediatrics. 2021.
- Le Doare K, et al. Breast milk and Group B streptococcal infection. 2014.
- Miselli F, et al. Transmission of Group B Streptococcus in late-onset neonatal disease. 2022.
- Saleh M, et al. Breast milk-associated late-onset group B streptococcus disease. 2025.


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