ベラパミル が糖尿病に効果があるという論文を最近みました。
正直、ベラパミル が?っていう感覚です。
ベラパミルは基本的には血圧の是正や不整脈に使用される薬剤だからです。
ほとんどの臨床医はワソランと糖尿病はリンクしていないと思います。
ある薬が実はこっちの疾患にも役立つかもっている論文は非常に勉強になりますし、同時に驚きもあります。
簡単にベラパミルについて基礎を記述した後に、本題の論文をみていきたいと思います。
ベラパミルとは?
ベラパミルは、カルシウムチャネルブロッカーとして分類される医薬品です。
主に高血圧、不整脈、冠動脈疾患の治療に使用されます。
ベラパミルは、血管の平滑筋細胞や心筋細胞内のカルシウムの取り込みを抑制することで、血圧を下げたり心臓の働きを調整する作用があります。
ベラパミルの効果
高血圧の治療におけるベラパミルの効果
ベラパミルは、血管内のカルシウムの取り込みを抑制することで、血管を拡張させる作用があります。これにより、血圧を下げることができます。
また、心臓の収縮力を抑えることにより、心臓の負担を減らす効果もあります。
高血圧患者に対するベラパミルの有効性は、多くの臨床試験で確認されています。
冠動脈疾患の治療におけるベラパミルの効果
ベラパミルは、冠動脈疾患の治療にも使用されます。
冠動脈疾患とは、心臓自身を栄養する冠動脈に狭窄や閉塞が生じ、心筋の酸素供給が不十分になる状態を指します。
ベラパミルは、冠状動脈の拡張を促すことで、心筋への酸素供給を改善する効果があります。
不整脈の治療におけるベラパミルの効果
ベラパミルは、不整脈の治療にも使用されます。
不整脈とは、心臓のリズムが乱れる病気で、心拍数が速くなる場合もあります。
ベラパミルは、心筋の伝導を調整することにより、不整脈を抑制する効果があります。
ベラパミルはPSVT(発作性上室性頻拍)やAF(心房細動)などの不整脈の治療によく使用される薬剤の一つです。
これがメインの使い所かなと思います。
PSVTは、心臓の上室が異常な速さで収縮する病態を指し、発作的な心拍数の増加や息切れ、めまいなどの症状を引き起こします。
AFは、心臓の収縮が不規則になり、血液の循環が悪くなる病態を指し、心臓発作や血栓症などの合併症を引き起こす可能性があります。
発作のために頓服でワソランを持っている方も多いのではないでしょうか?
ベラパミルの副作用
ベラパミルの一般的な副作用には、頭痛、めまい、ふらつき、動悸、低血圧などがあります。これらの症状は、通常は軽度であり、時間とともに緩和されることが多いです。
消化器系に影響を与える場合があります。吐き気、下痢、便秘、腹痛、胃痛などの症状が現れることがあります。
ベラパミルは、稀に肝機能障害、皮膚炎、脱毛症、血液障害、筋肉痛、関節痛などの副作用が報告されています。
ベラパミルと糖尿病について
ざっと基礎知識を記述しましたが、本題です。
ベラパミルは、上述したように主に不整脈や高血圧の治療に使用される薬剤です。
しかし糖尿病に対しても効果があるとされています。
ベラパミルは、インスリン分泌を促進する作用があり、2型糖尿病の治療に用いられることがあります。
既知の研究によると、動物実験などでインスリン抵抗性を改善し、グルコースの代謝を促進することが示されています。膵臓のβ細胞を刺激して、インスリンの分泌を増加させる可能性が報告されています。
A Randomized Controlled Trial of R-Form Verapamil Added to Ongoing Metformin Therapy in Patients with Type 2 Diabetesという論文からです。
概要ですが、
参加者は、1 日あたり ベラパミル の450、300mg、または 150 mg、または一致するプラセボを、メトホルミンという糖尿病薬と組み合わせて、同じ比率でランダムに割り当てられました。
主要評価項目は、12 週間の治療後のヘモグロビン A1c (HbA1c) の変化です。
以下は結果です。
A total of 184 eligible participants were randomized to receive either R-Vera or placebo plus metformin. At week 12, significant reductions in HbA1c were observed for R-Vera 300 mg/day (−0.36, P = 0.0373) and 450 mg/day (−0.45, P = 0.0098) compared with placebo. The reduction in HbA1c correlated with decreasing fasting plasma glucose levels and improved HOMA2-β score. Treatment with R-Vera was well tolerated with no hypoglycemic episodes occurring during the trial.
A Randomized Controlled Trial of R-Form Verapamil Added to Ongoing Metformin Therapy in Patients with Type 2 Diabetes
訳してみると、
合計 184 人の適格な参加者が、R-Vera(ベラパミル ) またはプラセボとメトホルミンのいずれかを受け取るように無作為に割り付けられました。
12 週目に、プラセボと比較して、R-Vera 300 mg/日 (-0.36、P = 0.0373) および 450 mg/日 (-0.45、P = 0.0098) で HbA1c の有意な減少が観察されました。
HbA1c の低下は、空腹時血糖値の低下と HOMA2-β スコアの改善と相関していました。R-Vera による治療は忍容性が高く、試験中に低血糖エピソードは発生しませんでした。
結論ですが、進行中のメトホルミン療法に R-Vera を 1 日 2 回追加すると、2 型糖尿病患者の血糖コントロールが大幅に改善されたとのことです。
この論文でもベラパミルが糖尿病に効果がある可能性が指摘されました。
その他の論文ですが、
Effect of Verapamil on Pancreatic Beta Cell Function in Newly Diagnosed Pediatric Type 1 DiabetesA Randomized Clinical Trialです。
小児の論文になります。
主要アウトカムは、1 型糖尿病の診断から 52 週間での C ペプチドレベル (膵臓ベータ細胞機能の尺度) です。
In the verapamil group, the mean C-peptide area under the curve was 0.66 pmol/mL at baseline and 0.65 pmol/mL at 52 weeks compared with 0.60 pmol/mL at baseline and 0.44 pmol/mL at 52 weeks in the placebo group (adjusted between-group difference, 0.14 pmol/mL [95% CI, 0.01 to 0.27 pmol/mL]; P = .04).
This equates to a 30% higher C-peptide level at 52 weeks with verapamil.
The percentage of participants with a 52-week peak C-peptide level of 0.2 pmol/mL or greater was 95% (41 of 43 participants) in the verapamil group vs 71% (27 of 38 participants) in the placebo group. At 52 weeks, hemoglobin A1c was 6.6% in the verapamil group vs 6.9% in the placebo group (adjusted between-group difference, −0.3% [95% CI, −1.0% to 0.4%]).
Effect of Verapamil on Pancreatic Beta Cell Function in Newly Diagnosed Pediatric Type 1 DiabetesA Randomized Clinical Trial
訳しますと、
ベラパミル群では、曲線下の平均 C-ペプチド面積は、ベースラインで 0.66 pmol/mL、52 週で0.65 pmol/mL であったのに対し、プラセボ群ではベースラインで 0.60 pmol/mL、52 週で 0.44 pmol/mL でした ( 調整されたグループ間差、0.14 pmol/mL [95% CI、0.01 ~ 0.27 pmol/mL]; P = .04)。
これは、ベラパミルを使用した場合、52 週間で 30% 高い C ペプチド レベルに相当します。
52 週間のピーク C ペプチド レベルが 0.2 pmol/mL 以上であった参加者の割合は、ベラパミル グループで 95% (参加者 43 人中 41 人) であったのに対し、プラセボ グループでは 71% (参加者 38 人中 27 人) でした。 52 週の時点で、ヘモグロビン A1c はベラパミル群で 6.6%、プラセボ群で 6.9% でした (調整された群間差、-0.3% [95% CI、-1.0% ~0.4%])。
結論ですが、
新たに 1 型糖尿病と診断された小児および青年において、ベラパミルは、プラセボと比較して、診断から 52 週で刺激された C ペプチド分泌を部分的に保存することがわかりました。
本来であれば1型糖尿病で膵臓の機能が低下するところが、ベラパミル 投与群はC ペプチド分泌が維持できていることになりますので、糖尿病1型にも効果がありそうですね。
まとめ
ベラパミルの本来の使用は、高血圧や不整脈の治療に使われています。
最近の論文では糖尿病にも効果があるのではという報告があります。
今回提示した論文からは糖尿病1型、2型ともに効果はありそうです。
高血圧と糖尿病が併発している方も多いと思いますが、従来の治療+ベラパミル をadd onするような使い方になるのでしょうか?
今回紹介した2論文は結構面白いと思います。
今後も症例の蓄積は必要と思われます。
以上参考になれば幸いです。
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