専門外であるが、膵臓がんに対する新しい知見が最近SNSで盛り上がっているので簡単にまとめている
そもそも膵臓がんは、がんの中で最も治療成績が悪い疾患のひとつ。
これは感覚論ではなく、医学的な事実です。
- 5年生存率:約10%
- 診断時点で半数以上が転移
- 手術できるのは全体の2割以下
「膵臓がんは“見つかった時点でかなり厳しい”」っというのが一般認識であろう

なぜ膵臓がんはここまで難しいのか
理由はいくつもありますが、最大の特徴は構造的に治療を拒むがんであることです。
膵臓がん(膵管腺癌:PDAC)は、
- がん細胞そのものは意外と少なく
- その周囲を**線維性間質(硬い結合組織)**が分厚く取り囲む
という特殊な構造をしています。
このため、
- 血管が押しつぶされる
- 抗がん剤が腫瘍内部に届かない
- 免疫細胞も侵入できない
という、「薬も免疫も届かない要塞」が出来上がります。
さらに、約90%以上で KRAS遺伝子変異を持つことも、膵臓がんの厄介さに拍車をかけてきました。
KRAS阻害薬の登場と、すぐに見えた限界
近年、KRASを直接標的とする薬剤(RAS(ON)阻害薬)が登場し、
「ついに膵臓がんにも分子標的治療が効く時代が来た」と期待されました。
実際、KRAS阻害薬は、
- これまでの治療よりも明らかに腫瘍を縮小させ
- 生存期間も改善しました
しかし、すぐに重大な問題が明らかになります。
ほぼ必ず、短期間で腫瘍耐性が出現する・・・
KRASを止めても、がんは別の経路を使って生き延びてしまうのです。
今回の研究は、何が違うのか?
今回注目された研究は、マウスの実験下ですが、
2026年1月27日付で、Mariano Barbacid(スペイン国立がん研究センター CNIO)のグループが進行性のKRAS 変異膵臓がんをマウスで完全に消失させたP NAS論文を発表したと複数報道されています。
「KRAS阻害薬が効かない」のではなく、
「KRASだけを見ていたのが間違いだった」
という発想に立っています。
発想の転換
KRASはがんの“中心エンジン”ですが、単独で働いているわけではありません。
- 上流(EGFRなど)
- 下流(RAF/MEK/ERK)
- 直交する生存経路(STAT3など)
これらがネットワークとして結びつき、耐性を作る。
そこで研究者たちは、
三方向を同時に遮断するという戦略を取りました。
研究で使われた3つの標的
① KRASそのもの
- daraxonrasib(RMC-6236)
- KRAS活性化状態を直接阻害
② 上流の逃げ道:EGFR経路
- afatinib
- EGFR/HER2を不可逆的に阻害
- KRASを止めた後に起こる「EGFR依存の代償活性化」を遮断
③ 耐性と環境の司令塔:STAT3
- SD36(STAT3 PROTAC)
- STAT3を阻害するのではなく分解させる
- 炎症、腫瘍微小環境、幹細胞性、薬剤耐性に深く関与
この3剤を同時に使うことで、
がん細胞の「逃げ道」をすべて塞ぐ設計です。
結果はどうだったのか
- 三剤併用で 腫瘍は完全退縮
- 200日以上再発なし
- 単剤や二剤では必ず出た耐性が出現しない
- 体重減少や致死毒性はなく、耐容性は良好
めちゃ成績いいやん
最後に:これは臨床にどうつながるのか
- これは 動物実験
- 明日から使える治療ではない
- 三剤併用は副作用管理も簡単ではない
膵臓がんに対して、理論的に“耐性を防ぐ治療設計”が可能であることを示した
という点です。
膵臓がんがすぐに「治る時代が来た」わけではありませんが、長年、出口が見えなかった迷路に、初めて地図が描かれたことが、この研究の本当の意味だと思います。
Xでは多くの医療関係者がこの論文を投稿しています、非常に今後が気になる研究と思います。
以上参考になれば幸いです

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