鉄について、鉄の利用、鉄欠乏性貧血

健康・減量

その倦怠感は鉄欠乏性貧血かもしれません。

今回は鉄をまとめていきたいと思います。

幼児1万人分の鉄分チェックということで、明治が鉄チェック活動を始めるというニュースを耳にしました。

アカチャン本舗の店舗に採決せずヘモグロビン値を測る機器を設置するらしく、1−6歳の幼児1万人を対象にするとのことです。面白い試みと思います。

というのも潜在的な鉄欠乏は小児には一般的にあるからです。

実際に鉄欠乏性貧血を疑っておらず、偶発的に風邪や感染症で血液検査した時に若年児の場合は発覚することも多いです。

成人の場合は、女性に多く,過多月経によるものが大半と思われます。

世界的に見ると、鉄欠乏は世界では最も多い栄養障害で30%程度の小児は鉄欠乏と言われています。

東南アジアやアフリカなどが多いとされており、食物の摂取不足が原因です。

日本では基本的に純粋な栄養失調での鉄欠乏というのは少なくなってきていますが、偏食であったり母乳栄養だけだったりすると見かけることもあります。

成人になってからもありふれた疾患です。

一般的な貧血の指標:ヘモグロビンの下限は以下のようになっています。

小児

5歳未満 – 11 g/dL

5 から12歳– 11.5 g/dL

12 から15歳 – 12 g/dL

妊娠していない女性 11– 12 g/dL

男性 – 13 g/dL

体内での鉄について

総量として体内鉄は4gくらいと言われています。

約 75% がヘムタンパク質のヘモグロビンとミオグロビンに結合しています。ヘモグロビンは赤血球と関係していますね。

残りはフェリチンと言われる貯蔵鉄として存在します。

成人の場合、食事から摂取できる 1 日あたりの鉄の量は 1 ~ 2 mg しかありません。

赤血球の寿命とともにヘモグロビンも放出され体内で再利用されています。

食事の分と再利用の分で補うことになります。

幼児や子供の場合は急速に成長し、筋肉が増加するため、より食事から鉄分を摂取する必要があります。

●摂取と消費のバランス

小児においては、乳児の鉄分摂取量不足は生後十分な鉄分補給を開始せずに母乳で育てていることや、鉄分強化が不十分な調乳が原因であることが多いです。

母乳栄養は小児において推奨されていますが、一般的なミルクに比べて鉄分が低いことはよく知られています。

●不十分な鉄吸収 

腸内での鉄の吸収は、摂取した鉄の形態 に依存します。

魚、鶏肉、肉)は、野菜などよりも鉄の体内利用が高いです。

ビーガンの食事をしている方は、制限の少ない食事をしている方と比較して、鉄欠乏のリスクは高くなります.

腸管の病気、炎症性腸疾患などを有している方は摂取量に比して吸収が悪いことがあります。

●消費喪失に関して

  • 全身性炎症性疾患、腫瘍、感染症
  • サラセミアなどの貧血または家族性のヘモグロビン血症
  • 喪失としては月経過多、消化管出血
  • ピロリ菌による胃炎

などの病気挙げられます。

●鉄欠乏性貧血の症状、関連するもの

全身に十分な酸素が運ばれなくなると、動悸や倦怠感が認められます。

顔色不良も目立ちます。

鉄はヘモグロビンの産生に不可欠であり、そのヘモグロビンが全身に酸素を運んでいます。

つまり鉄が少ないとヘモグロビンが少なくなり、末梢組織への酸素供給が減ることになります。それは以下の式で表現されています。

DO2= COxCaO2= COx(Hbx1.31xSaO2+0.0031xPaO2)。

これはDO2が酸素供給で、COが心拍出量、CaO2がが動脈血の酸素含有量です。

極端にHbが下がった場合を考えると、酸素供給量を増やすためには心拍出量を増やす方向に働きます。

ということは心臓に頑張らせることになりますので、動悸がしたり、今までは大丈夫であった運動も心臓が頑張りきれず、疲れやすいといったことが起こります。

●他に特徴的な症状

異食症:食物としては適さない物質を食べてしまいます。

よく成書では土を食べたくなるなどの記載があります。紙なども食べたくなるようです。

むずむず足症候群:活動してない時に足を動かしたくなる。むずむずして不快感が生じる状態です。鉄欠乏していなくても症状が出る方ももちろんいらっしゃいます。

鉄が正常でも症状改善のために鉄剤を内服するケースもあるようです。

●治療について

食事の見直し、鉄剤の内服です。

貧血が重度であれば、輸血を行う可能性もあります。

鉄との関係性

●鉄と発達

認知や行動や、運動能力に悪影響を与えるとの報告もあります。

There is a consensus on the fact that ID has a negative impact on cognition, behavior, and motor skills. 

Neuropsychiatric Disease and Treatment 2014:10 

●鉄と精神疾患

日本からの論文ですが、うつ病と貧血が関係しているのではとの論文があります。

うつ病で食欲がなくなったせいで鉄欠乏性貧血になったのか、もともと食事が少なく鉄欠乏性貧血になり、うつ傾向になったのか?それは正直わからないですね。

The present study examined whether IDA is associated with depression in a relatively large sample of participants with self-reported history of depression 

Psychiatry and Clinical Neurosciences 2018; 72: 513–521 

●鉄と低酸素

成人でも心臓の病気で、体内の酸素の値が80-90%前後で生活されている方もいらっしゃると思います。チアノーゼを有している方です。

その方だと上記の基本的なヘモグロビンの値は貧血に当てはまらないかもしれません。普段特に疾患のない方の場合は、体の血中酸素の値は spo2は90%後半、98%以上あることが大半です。その値が低いと必然的に末梢への酸素供給は少なくなっています。

それを補うために体の生理的作用としてヘモグロビンを多くする働きがあります。

チアノーゼが慢性にある方だと具体的な正常値はわかりませんが14.15でも少し低めなのかもしれません。以下の式を参考にしてください。

Hb = 57.5 – (0.444 x 酸素飽和度) 

Am J Cardiol. 2011;107:595- 599

酸素飽和度が100ならHb13.1となりますが、酸素飽和度が90%なら、17.9となります。

酸素飽和度が90%の人のヘモグロビンの正常値は思っている以上に高い可能性があります。

まとめ

鉄について、基準値や体内での利用について記載してあります。

小児から成人までにわたって見られる疾患で、基準値や原因なども異なっています。

鉄に関係する細々としたことも記載しております。慢性に低くなっているケースは症状もはっきりしない場合も多いです。

倦怠感は鉄欠乏による症状かもしれませんので、一度チェックしてもいいかもしれません。

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