日本は先進国の中で最も乳児死亡率(1歳未満で死亡する出生1,000人あたりの赤ちゃんの数)が低く、2024年時点では1.8人と報告されています
これは世界でもトップクラスの水準です
最近エマニュエルトッド氏の西洋の敗北を読みましたが、乳幼児死亡率を社会の成熟度として評価するという観点を説明しており面白いと思いました
乳児死亡率メインの話ではなく、地政学含めた政治に関する非常に面白い本でしたのでおすすめです
日本は低いとは思ってましたが、相当上位の低さであります
実際、日本は「子どもを育てやすい国ではない」と評価されがち(少子化や貧困対策の不十分さなど)ですし、高齢者医療に偏ってる側面もあります
しかし「子どもの命を守る制度」については、国際的に圧倒的に評価されている。
高齢者福祉に偏った国家財政であっても、乳児の生存に特化した制度は“小さく効率的に”生き残っているとも言えます
日本特有の現象=「医療は強い、福祉は弱い」
これが謎
一方アメリカは、医療先進国のイメージがあり、そこそこ上位かと思っていましたが、先進国ではかなり下位であると言うことも全然知らなかったです

- なぜ乳児死亡率は社会の成熟度を示すのか?
- 先進国各国の乳児死亡率と医療費(2024年)
- G7・OECD主要国の乳児死亡率と医療費のGDP比率(2023年)
- 乳児死亡率が最も低い10か国と人口規模(2023年)
- 人口1億人以上の国の乳児死亡率(2023年)
- 日本 vs 北欧諸国:医療費構造と小児医療比較表(2022-2023年)
- 乳児死亡率が低い国々の早期幼児教育・保育(ECEC)への公的支出(対GDP比)
- 先進国の小児科医師数(人口10万人あたり、2024年)
- 日本の開業医数と小児科医の分布
- “謎”の構造を丁寧に解きほぐしてみる
- 具体的な理由を考えてみる
- まとめ:日本の乳児死亡率が低い理由は「奇跡」ではなく「偶然の積み重ね」
なぜ乳児死亡率は社会の成熟度を示すのか?
1. 社会インフラと保健医療体制の整備
- 妊産婦健診、出産医療、小児医療、予防接種体制の充実
- 清潔な水、衛生、交通インフラとの相関
2. 医療アクセスと健康格差の少なさ
- ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(全員が医療にアクセスできる体制)
- 周産期医療・新生児集中治療の普及
3. 教育と母親の健康リテラシー
- 女性の教育水準が高い社会では健康行動も向上
- リプロダクティブ・ヘルスの理解と支援体制が寄与
4. 経済的豊かさだけでなく、社会保障の広がり
- 単にGDPが高くても、社会保障が薄ければ下がらない(例:アメリカ)
- 全ての子どもに手厚く支援が届く社会(例:北欧・日本)では低い
🕊️ 5. 人間の命をどう守るかという社会の価値観
- 社会的に最も弱い存在=乳児を守る力は、その社会の倫理的・政治的成熟度を反映
確かに上記を踏まえると乳児死亡率は、社会の「成熟度」や「公正さ」、「インクルーシブネス(包摂性)」を定量化できる鏡のような気がしますね
本記事では、乳児死亡率を先進国および上位国との比較データを交えながら、この現象の背景にある要因を探ります。
以下はChatGPTでデータを出しておりますので、そのデータが真としてでの検討になります
簡単にはデータの確認していますが、大きなずれはないような気がします
先進国各国の乳児死亡率と医療費(2024年)
国名 | 乳児死亡率 (/1,000) | 一人当たり医療費 (USD) |
日本 | 1.8 | 約4,666 |
イタリア | 2.3 | 約3,500 |
ドイツ | 3.1 | 約6,000 |
フランス | 3.4 | 約6,115 |
イギリス | 4.0 | 約5,387 |
カナダ | 4.4 | 約5,905 |
アメリカ | 5.4 | 13,432 |
ロシア | 3.7 | 約1,500 |
圧倒的に日本が低い、イタリアも低い
下記にも示しますがイタリアは小児科医が多いはずです
しかしアメリカの医療費の高さに対する乳児死亡率の高さは特段高い
トッド氏も指摘していますが、ロシアより低くなっている・・・
G7・OECD主要国の乳児死亡率と医療費のGDP比率(2023年)
国名 | 乳児死亡率 (/1,000) | 医療費のGDP比率 (%) |
日本 | 1.7 | 約10.9 |
ノルウェー | 1.7 | 約10.5 |
フランス | 3.5 | 約12.1 |
ドイツ | 3.2 | 約12.7 |
イギリス | 3.9 | 約12.0 |
カナダ | 4.5 | 約11.2 |
アメリカ | 5.4 | 16.6 |
メキシコ | 12.7 | 約5.5 |
コロンビア | 16.5 | 約7.2 |
対GDPでの乳児死亡率のデータを出してみました。
上位国のノルウェーとG D P比率では変わりません
ドイツやフランスは日本よりやっぱり高いです
乳児死亡率が最も低い10か国と人口規模(2023年)
順位 | 国名 | 乳児死亡率(‰) | 推定人口(2023年) | 備考 |
1 | サンマリノ | 1.53 | 約3.4万人 | 小規模国家 |
2 | モナコ | 1.54 | 約3.9万人 | 小規模国家 |
3 | エストニア | 1.55 | 約132万人 | バルト三国の一つ |
4 | シンガポール | 1.73 | 約590万人 | 都市国家 |
5 | 日本 | 1.74 | 約1億2,400万人 | 世界有数の人口規模 |
6 | スロベニア | 1.75 | 約210万人 | 中欧の国 |
7 | ノルウェー | 1.77 | 約540万人 | 北欧国家 |
8 | フィンランド | 1.78 | 約550万人 | 北欧国家 |
9 | モンテネグロ | 1.91 | 約62万人 | バルカン半島の国 |
10 | スウェーデン | 2.01 | 約1,050万人 | 北欧国家 |
福祉国家としては、やっぱり北欧なんだなと実感するグラフです
人口が少ないので、小回りの効く政策が取れたり、保健師的な活動がやりやすいのでしょうか?
その中で日本の1億人越えは圧倒的な人口になっています・・・
人口1億人以上の国の乳児死亡率(2023年)
国名 | 推定人口(2023年) | 乳児死亡率(‰) | 備考 |
🇯🇵 日本 | 約1億2,400万人 | 1.74 | 世界最低水準 |
🇨🇳 中国 | 約14億人 | 5.5 | 急速な改善傾向 |
🇺🇸 アメリカ | 約3億3,000万人 | 5.4 | 先進国としては高め |
🇮🇳 インド | 約14億人 | 24.5 | 地域格差が大きい |
🇮🇩 インドネシア | 約2億7,000万人 | 17.0 | 中所得国 |
🇧🇷 ブラジル | 約2億1,500万人 | 12.4 | 改善傾向あり |
🇵🇰 パキスタン | 約2億3,100万人 | 50.1 | 高水準のまま |
🇳🇬 ナイジェリア | 約2億2,300万人 | 60.1 | 世界でも高い水準 |
🇧🇩 バングラデシュ | 約1億7,000万人 | 24.4 | 改善傾向あり |
🇷🇺 ロシア | 約1億4,400万人 | 5.3 | 中程度の水準 |
人口一億人以上に限定すると
圧倒的に日本が低い
日本 vs 北欧諸国:医療費構造と小児医療比較表(2022-2023年)
指標・分類 | 🇯🇵 日本 | 🇸🇪 スウェーデン | 🇳🇴 ノルウェー | 🇫🇮 フィンランド | 🇩🇰 デンマーク |
人口構成(65歳以上) | 約29%(世界最高水準) | 約20% | 約18% | 約23% | 約20% |
医療費総額に占める65歳以上の割合 | 約60% | 約50% | 約50% | 約50% | 約50% |
小児医療費の割合(0~14歳) | 約4.5% | 約8% | 約9% | 約8% | 約9% |
小児医療費の公費負担割合 | 高(自治体差あり) | 全額公費 | 全額公費 | 全額公費 | 全額公費 |
長期介護費(LTC)対GDP比 | 約1.8% | 約3.4% | 約3.5% | 約3.0% | 約3.2% |
医療への対GDP支出割合 | 約11.0% | 約11.4% | 約10.5% | 約9.6% | 約10.0% |
小児ワクチン接種率(DTP・MR) | 95〜99%(高水準) | 95〜98%(高水準) | 95〜98%(高水準) | 95〜97%(高水準) | 95〜97%(高水準) |
乳児死亡率(1,000出生あたり) | 1.74人(世界6位) | 約2.0人 | 約1.8人 | 約1.8人 | 約2.0人 |
これだけみると、高齢者にかなり医療費を割いてるように見える
乳児死亡率が低い国々の早期幼児教育・保育(ECEC)への公的支出(対GDP比)
国名 | ECEC公的支出(対GDP比) | 備考 |
🇸🇪 スウェーデン | 約1.6% | 北欧諸国で最も高い水準 |
🇮🇸 アイスランド | 約1.7% | ECECへの投資が非常に高い |
🇫🇮 フィンランド | 約1.2% | 教育と保育の統合が進む |
🇳🇴 ノルウェー | 約1.3% | 高水準の福祉国家 |
🇯🇵 日本 | 約0.5% | OECD平均を下回る |
🇸🇬 シンガポール | 約0.2% | 公的支出は低め |
🇬🇧 イギリス | 約0.6% | 政府の支援は限定的 |
🇪🇪 エストニア | 約1.0% | 教育改革が進む |
🇸🇮 スロベニア | 約0.8% | 教育への投資が増加傾向 |
🇲🇪 モンテネグロ | データなし | 小規模国家でデータ未公表 |
出典:OECD Family Database PF3.1(2019年または最新年)OECD
小児医療費、一番低いんですよね
高齢者の割合一番多いのに・・・
福祉国家と比べて、医療費の半分やから
かなり少ない費用で小児科医療をになっているとも考えられる
効率が良い?
じゃあ小児科数圧倒的に多いんじゃないと考えてみる
先進国の小児科医師数(人口10万人あたり、2024年)
国名 | 小児科医師数(人口10万人あたり) | 備考 |
🇯🇵 日本 | 約13.0 | 小児科専門医制度が確立されており、都市部に集中傾向あり |
🇫🇷 フランス | 約15.0 | 小児科医の数が多く、地域による偏在が少ない |
🇩🇪 ドイツ | 約12.0 | 小児科医の数は安定しており、予防医療にも注力 |
🇮🇹 イタリア | 約14.0 | 小児科医の密度が高く、家庭医制度と連携している |
🇬🇧 イギリス | 約11.0 | NHSの下で小児科医が配置されているが、地域差が存在 |
🇨🇦 カナダ | 約10.0 | 広大な国土により、都市部と地方での偏在が課題 |
🇺🇸 アメリカ | 約9.0 | 小児科医の数は多いが、保険制度の影響でアクセスに差 |
🇷🇺 ロシア | 約8.0 | 小児科医の数は増加傾向にあるが、地域による差が大きい |
そんなに多いわけではない
日本の開業医数と小児科医の分布
日本の医師数は、2020年時点で人口1,000人あたり約2.6人と報告されています。これはOECD諸国の中では中程度の水準です。
特に小児科医に関しては、都市部に集中する傾向があり、地方や過疎地域では不足が指摘されています。しかし、地域の保健師や看護師との連携、遠隔医療の導入などにより、医療アクセスの格差を補完する取り組みが進められています。
日本の人口規模と管理の難しさ
指標 | 日本 | スウェーデン | フィンランド |
人口 | 約1.2億人 | 約1,000万人 | 約550万人 |
面積 | 37.8万km² | 45万km² | 33.8万km² |
人口密度 | 高い | 低い | 低い |
管理が難しい理由
- 人口規模が大きすぎる
- 全国一律の制度設計が難しく、「都市部」と「地方」「離島」でサービス格差が生まれやすい。
- 保健所の数や人員も、自治体ごとに大きく異なる。
- 医療制度が“自由選択”で分散的
- 日本では「フリーアクセス」(紹介状なしで大病院に行ける)ため、統一的なかかりつけ制度が弱い。
- 地域包括ケアや、母子保健の情報共有が「縦割り」になりやすい。
- 自治体の裁量がバラバラ
- 予防接種の通知の仕方、育児支援、乳児健診の案内などが市区町村ごとに異なる。
それでも日本の乳児死亡率が低い理由がわからない
どう考えても乳児死亡率が低い理由が謎
“謎”の構造を丁寧に解きほぐしてみる
上記のデータで諸国と比較して、日本の医療制度は決して高額ではありません
それでも世界トップレベルの乳児死亡率を実現できているのは、
「制度 × 現場力 × 文化」が重層的に作用しているからか?
日本は人口が多く、高齢者への医療費比率が極端に高いというハンディキャップを持ちながら、これを達成しています。
乳児死亡率が低い国々では、早期幼児教育・保育(ECEC)への公的支出が高い傾向があります
しかし、日本はECECへの公的支出が比較的低くても、乳児死亡率が非常に低い
そんな国は日本以外にないやろ、と改めて聞いてみる
ChatGPT:
おっしゃる通りです。実は、「ECEC(Early Childhood Education and Care)への公的支出が低いのに、乳児死亡率が非常に低い国」というのは、日本以外ではほぼ存在しません。
これはまさに日本の特異性を示しており、他の国々では:
- 乳児死亡率が低い国 → ECEC支出も高い(北欧型)
- ECEC支出が低い国 → 乳児死亡率も高め(発展途上国型)
という相関が一般的です。
これは他国には容易に真似できない、「日本独自の医療文化的奇跡」としか言いようがない
具体的な理由を考えてみる
1. 制度的インフラの「長寿命」
- 母子手帳制度(1948年開始):妊娠~乳児期を一貫管理。
- 保健所・保健師制度(戦前から):戦後復興とともに地域密着。
- 国民皆保険制度(1961年〜):受診ハードルが極端に低い。
2. 国民性:病院に行きたがる/行きやすい文化
特徴 | 説明 |
🏥 フリーアクセス制度 | 専門医に直接行ける・紹介状不要(他国では稀) |
🧒 子どもが熱を出したら即受診 | 「様子見」が少なく、結果として早期発見・治療 |
👪 親の育児熱心さ | 予防接種・乳児健診の出席率がほぼ100%に近い |
🧼 衛生意識の高さ | 靴を脱ぐ、手洗い習慣、清潔な家庭環境 |
3. 医師や医療者の「献身型」現場文化
- NICU医療は過酷な勤務体制を支えに機能している。
- 保健師や看護師が「顔が見える支援者」として地域に存在している。
➡ 今は働き改革でマシになったのかもしれませんが他国のように「制度で回す」ではなく、現場の頑張りで補っている面がまだ強いのではないでしょうか
小児医療従事者の努力の賜物、または犠牲の結果なのかもしれません・・・
4. 衛生・社会的要因
- 水道水が飲める、住宅が清潔、家庭での育児が安定している。
- 出産後すぐに保健師訪問があり、リスク家庭を早期発見。
- 乳児死亡の主因(感染、事故、低出生体重など)を多角的に潰している。
まとめ:日本の乳児死亡率が低い理由は「奇跡」ではなく「偶然の積み重ね」
日本の乳児死亡率の低さは、「制度×文化×現場力」が静かに積み上がって実現している成果
しかもこれは高齢者偏重な社会保障制度の中でも崩れず残っているという点で、世界的にも非常に珍しい現象と思う
具体的には乳児死亡率の低さは、以下の要因が相互に作用している結果と考えられます:
- 高いワクチン接種率:感染症の予防が徹底されており、乳幼児の健康維持に寄与しています。
- 医療制度の整備:国民皆保険制度により、誰もが必要な医療を受けられる体制が整っています。
- 医療従事者の努力の賜物
- 母子保健サービスの充実:母子手帳制度や定期健診など、乳幼児の健康管理が体系的に行われています。
- 地域医療の取り組み:保健師や看護師による地域密着型のケアが、医師不足を補完しています
小児医療費が少ないのに死亡率が低いのは色々な側面があると思いますし、日本だけ特異的だなと感じました
以上参考になれば幸いです
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