肝機能異常の鑑別と検査、小児と成人。

最近は医療系ではない記事ばかりになっており、久しぶりに記事にしました。

最近少し肝機能異常で悩んみました。

成人の肝機能が高い時はなんらかの異常があることが多いと思います。アルコールが多いです。

しかし小児でも偶発的な検査でAST,ALTが3桁程度あり、特に症状がない症例があります。

緊急性がなければフォローするしかなく、しばらく経過観察中に値の改善を認めることが多いです。

何らかのウイルス感染の関与があったのかもしれません。

ただ鑑別疾患を想定する必要があります。肝機能異常について今回はまとめました。

肝臓の主要な機能

解毒機能:体内の有害物質や薬物を無害化し、排泄する。

代謝機能:糖質、脂質、タンパク質の代謝を調節する。

ビリルビン代謝:赤血球の老廃物であるビリルビンを処理し、胆汁として排泄する。

血液凝固因子の産生:血液が正常に凝固するためのタンパク質を産生する。

胆汁の産生:脂肪の消化を助ける胆汁を産生する。

栄養素の貯蔵:ビタミンA、D、B12などのビタミンや鉄、銅などのミネラルを貯蔵する。

肝機能異常の鑑別診断

肝機能異常を引き起こす疾患や原因は多岐にわたります。

列挙してもかなり多いですね。

ウイルス性肝炎

  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • D型肝炎
  • E型肝炎

アルコール性肝炎

アルコール性肝硬変

脂肪肝

単純性脂肪肝

非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)

薬物や毒物による肝障害

  • アセトアミノフェン過剰摂取
  • 一部の抗生物質や抗がん剤
  • 一部のハーブやサプリメント

自己免疫性肝炎

遺伝的・先天的な疾患

  • ウィルソン病
  • ヘモクロマトーシス
  • アルファ1-アンチトリプシン欠損症

肝硬変

肝腫瘍

肝血管腫

胆道疾患

  • 原発性胆汁性胆管炎 (PBC)
  • 原発性硬化性胆管炎 (PSC)
  • 胆石症

肝静脈閉塞症 (Budd-Chiari症候群)

寄生虫感染

エキノコックス感染症

アメーバ性肝膿瘍

探せばこれ以外にもあるのですが、もっとマイナーになります

ざっくりまとめてみましょう

感染系

ウイルス性肝炎:A型、B型、C型、D型、E型などの肝炎ウイルスによる感染。寄生虫も。

これは小児成人共通ですね。D型とE型は基本無視でいいと思います。

ウイルスに関しては、CMV (サイトメガロウイルス)、EBV (エプスタイン・バールウイルス)は鑑別に上がります。

アルコール性肝疾患や生活習慣:過度なアルコール摂取による肝障害。脂肪肝:肥満、糖尿病、高脂血症などに関連する肝臓の脂肪蓄積。アルコールに関しては小児では考える必要はないですね。脂肪肝は肥満な小児では認める例もあります。

薬物や毒物による肝障害:特定の薬物や化学物質の摂取による肝臓へのダメージ。

自己免疫性肝炎など自己免疫系:体の免疫システムが肝臓を攻撃する疾患。

遺伝的・先天的な疾患

遺伝疾患も重篤の場合は小児期で既に診断されると思います。軽症の疾患の場合は成人でもみられるかもしれません。

胆道疾患

腫瘍

肝、胆道以外:心疾患、外傷や内分泌異常

心臓が悪い場合は血液が鬱滞します。その結果心臓の手前にある臓器は血流の鬱滞の影響を受けます。肝臓は腫大し、軽度の肝機能異常を認めることもあります。

肝機能異常がある時の重要指標

黄疸:肝臓のビリルビン代謝機能の障害を示唆します。

血液凝固能:肝臓は血液凝固に関与する多くのタンパク質(凝固因子)を産生します。血液凝固能の評価は、肝臓の合成機能の状態を知る上で重要です。

肝臓腫大:肝臓の腫大は、炎症、腫瘍、脂肪の蓄積、肝硬変など、さまざまな肝疾患の兆候となる可能性があります。肝疾患の種類や進行度を示唆することがあります。

これらの随伴症状があるかないかで鑑別疾患が変わってきますね。

肝機能異常は大したことないのにやたらとビリルビンが高い場合は、胆道疾患を疑う要素になります。

血液凝固能力も狂ってたら、そこそこの肝障害があるかもしれない。

肝不全に注意、アンモニアの値も気にした方がいいかもしれません。

肝臓腫大は右心不全かもしれないし、腫瘍かもしれないし、なんかの代謝異常かもしれないし。

必要な検査:一次スクリーニング

1. 血液検査

ALT (アラニンアミノトランスフェラーゼ)

AST (アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

ガンマGTP

ビリルビン

アルブミン

凝固系

2. ウイルス検査

上記ウイルス検査

3. 画像診断

腹部超音波

ここくらいまでは簡便で低侵襲で可能です。

二次スクリーニング以上

画像検査

腹部CT、腹部MRIは上記でもよくわからない時ですかね。

外科的胆道造影:MRIでもはっきりしない胆道病変が疑わしい時は考慮します。

でも、大概MRCPすればわかりますかね。

特殊検査

肝生検:最終的によくわからない場合は考慮されます。

小児の場合

血清銅やセルロプラスミン:Wilson病

抗核抗体:自己免疫性肝炎、その他自己免疫性疾患

乳酸ピルビン酸:ミトコンドリア病

濾紙血タンデムマス:代謝疾患

尿中有機酸分析:代謝疾患

まとめ

肝機能異常について基礎的なことをまとめています。

成人はアルコールや脂肪肝などで肝機能異常を認めることがあります。

小児でも時々、偶発的に肝機能異常を認めることがあります。

小児の場合は自然と改善することも多く、何らかのウイルス感染をしていた可能性が高いと思われますが、上記鑑別も念頭においてフォローすることは重要です。

ざっくり考えるなら、肝細胞の異常なのか、胆道の問題なのか、それ以外なのか、です。

以上参考になれば幸いです。

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