救急外来で役立つ胸痛の豆知識:CTで見つける心膜外脂肪壊死(EFN)

健康・減量

はじめに:文献で出会った「知らん病気」

正直に言うと、「心膜外脂肪壊死(Epipericardial Fat Necrosis, EFN)」なんて病名、私も最近まで知りませんでした

ある日、胸痛の鑑別についての文献を読んでいて、何気なく目に入った “EFN” という三文字

「脂肪が壊死?心膜の外?……それって結局何?」と、少し引っかかったのが最初の出会いでした。

調べてみると、これは救急外来でたまたま造影CTを撮ったときに偶然見つかることが多い、でも診断がつけばめちゃくちゃ安心できる良性疾患だったのです

救急の胸痛といえば、AMI含めて非常に怖い疾患だらけですからね

自分の備忘録も兼ねて、この「EFN」という小さくて大事な知識をまとめておこうと思います。

胸痛でCTを撮るのは、あの2つの除外が目的

救急で胸痛といえば、まず除外しなければならないのは:

  • 大動脈解離(Aortic dissection)
  • 肺塞栓症(Pulmonary embolism, PE)

この2つが否定できなければ造影CTは必須でしょうか

AM Iの鑑別をしてからになるかもしれませんが

ところが、“CTは問題なし”……でも患者はまだ痛がっているということもよく聞く

「心筋梗塞じゃないし、肺炎もなさそう。肋間神経痛?ストレス?とりあえずNSAIDs?」
そんなときに、画像で見つかる“脂肪組織の炎症”がEFNです。

EFNとは何か?ざっくり理解する

  • 病態:心膜外の脂肪組織(pericardial fat pad)が何らかの理由で壊死・炎症を起こす
  • 原因:外傷や明らかな誘因がないことが多いが、急激な体重変動やストレス、微細な循環障害が関連するとも言われる
  • 症状:左胸部痛、肩・上腹部に波及することもあり、呼吸や体位で増悪する
  • 検査:血液検査ではCRP軽度上昇程度。心電図・D-dimer・トロポニンは正常のことが多い
  • 画像所見:CTで限局性の脂肪濃度病変+周囲の“fat stranding”(炎症所見)を認める

左胸部痛、肩・上腹部に波及とかはAMIっぽく嫌なwordですね

実際の症例報告でEFNをつかむ

EFNは症候と検査だけではわからず、CTでの画像所見が診断の決め手になります。

以下は文献で紹介されている代表的な症例です。

🩺 症例1:25歳男性(Fukamatsuら)


🩺 症例2:23歳男性(Barretoら)

  • Epipericardial fat necrosis in chest CT and MRI: a case report of an unusual cause of chest pain associated with the initial diagnosis of undifferentiated connective tissue disease
    Valsalvaで増悪する胸痛を呈し、CT+MRIで3cm病変確認。NSAIDs+制酸薬で1ヶ月後に症状消失pmc.ncbi.nlm.nih.gov+5pubmed.ncbi.nlm.nih.gov+5researchgate.net+5

🩺 症例3:75歳男性、手術後に病理で確定

🩺 症例4:13歳男性、超音波所見あり

  • Diagnosis of Epipericardial Fat Necrosis on multimodality imaging in a pediatric patient: a case report and review of the literature
    CTで脂肪病変確認、超音波にも一致。保存療法で自然軽快、フォローアップで縮小確認

どう治療する?どう説明する?

  • 基本はNSAIDsによる対症療法
  • 数日~数週間で自然に軽快する
  • 入院不要
  • “命に関わるものではない”ことを明確に伝えることで患者の不安が軽減

まとめ:「知らんかった」で終わらせない知識

EFNは、診断がつけば不要な入院・不安・追加検査を避けられる“ありがたい”疾患です

そして、知っていなければ一生スルーしていたかもしれない胸痛の正体でもあります

私も全く知りませんでした

知らない疾患はまず診断できません

「EFNって何?」と思ったあなたは、すでに一歩進んでいます

一回学習したら忘れないと思います

最近では、自分の医療系の記事も少しずつ閲覧していただいており、非常に嬉しい思いです

この知識がいつか臨床の現場で生きると思って、お互い研鑽を積んでいきましょう

知らないと診断できないシリーズとして今後も症例を提示できればと思ってます

以下はchatGPTにCT画像を要求して見ました

CTはそのまんまなんですが

EFNを指定したのですが、あらぬところに矢印があるのでボツとなりました

基本的に前縦隔にできるとされております。

しかしCT画像としてはそのものでありA Iの進化は著しいと感じます

AIの自動読影の実臨床での活躍も近い気がします

以上参考になれば幸いです

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