公衆衛生や医療の発達で平均寿命が伸びることはいいことなのですが、その一方で認知症の数は増えています。
最近論文を見て驚いたのですが、アンブロキソールといえば去痰薬なのに、標題の通り特定の認知症に効果がある可能性が示唆されています。
アンブロキソールといえば去痰薬のイメージしかなく、別の領域に効果があるっていう薬は面白いですね。
そういう薬で有名なのは過去でいえば、バイアグラ(シルデナフィル)でしょうか。
バイアグラは、もともと狭心症の治療薬として開発されたものでした。
狭心症は、心筋の酸素供給が不足することで引き起こされる症状の一つで、シルデナフィルは血管を拡張して心筋の酸素供給を増やす効果が期待されていました。
臨床試験の過程で、シルデナフィルが男性の勃起不全の改善に効果的であることが発見され、アメリカ食品医薬品局(FDA)に勃起不全治療薬として承認されました。
このため、一般的にバイアグラは勃起不全治療薬として知られています。
しかし、その後の研究で、シルデナフィルが肺血管の拡張作用を持つことが明らかとなりました。
この作用により、肺の血管の抵抗が減少し、肺高血圧の症状が改善されることが示されました。
実際シルデナフィルは肺高血圧治療の第一線で使用されます。
本題に戻りますが、アンブロキソールの効果やどのように効くのかを記載しています。
アンブロキソールの効果は?
主に呼吸器系疾患の治療に用いられる薬剤であり、以下のような効果があります:
去痰効果:アンブロキソールは、去痰薬として広く知られており、気管支の粘液を希釈し、排出を促進することで、咳を和らげる助けとなります。具体的なメカニズムは、粘液の希釈、毛細血管の刺激やサーファクタントの生産と言われています。
サーファクタントは、肺胞の張力を減少させ、呼吸を助ける物質であり、また粘液の排出を助けることが知られています。
アンブロキソールのこれらの作用により、呼吸器系の粘液が効果的に希釈され、排出が促進されるため、咳が和らぎ、呼吸が改善します。特に気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および他の呼吸器疾患の患者にとって有益である可能性があります。
咽頭鎮痛効果:いくつかの製品では、アンブロキソールが咽頭の痛みや刺激を和らげるために使用されます
抗炎症および抗酸化効果:アンブロキソールには、抗炎症および抗酸化効果があるとも報告されています。
認知症に対する潜在的効果:最近の研究では、アンブロキソールがパーキンソン病認知症(PDD)およびレビー小体型認知症(LBD)の潜在的治療法として評価されています。
アンブロキソールは、酵素ベータ-グルコセレブロシダーゼのレベルを上昇させ、タンパク質アルファ-シヌクレインのレベルを低下させることが示されており、これらの変化が認知機能の改善につながる可能性があります.
認知症に対する効果はかなり最近の知見です。私も最近知りました。
よくわからないので調べてみましょう。
タンパク質アルファ-シヌクレインとは?
タンパク質α-シヌクレイン(alpha-synuclein)は、ヒトおよび他の多くの動物の神経系で見られるタンパク質であり、神経細胞の健康および機能に重要な役割を果たしています。
このタンパク質が異常に集まると、神経変性疾患の発症や進行に寄与する可能性があります。特に、α-シヌクレインの異常な蓄積は、パーキンソン病(PD)、レビー小体病、および多系統萎縮症(MSA)などの疾患と関連しています。
パーキンソン病:パーキンソン病では、α-シヌクレインが異常構造を形成し、脳内で小さなクランプ、いわゆるレビー小体を形成します。これらの構造は、神経細胞の死を引き起こし、パーキンソン病の主な症状である運動障害を引き起こします。
レビー小体病:レビー小体病では、α-シヌクレインが脳の他の部分にも集まり、認知症や他の神経症状を引き起こす可能性があります。
α-シヌクレインのレベルを制御することは、これらの神経変性疾患の治療において重要な研究分野となっています。例えば、アンブロキソールは、α-シヌクレインのレベルを低減させることにより、パーキンソン病認知症(PDD)およびレビー小体型認知症(LBD)の患者の認知および運動症状を改善する可能性があると示されています。
α-シヌクレインとタウタンパクは別物
α-シヌクレイン(alpha-synuclein)とタウタンパク質(tau protein)は異なるタンパク質です。
それぞれのタンパク質は、神経変性疾患の異なるアスペクトに関与しています。
α-シヌクレイン:α-シヌクレインは、主に脳内で見られるタンパク質であり、神経細胞の健康および機能に重要な役割を果たします。α-シヌクレインが異常に集まると、前述のようにパーキンソン病やレビー小体病などの神経変性疾患の発症および進行に関与することが知られています
タウタンパク質:タウタンパク質は、神経細胞内の微小管の安定化と組織化に関与しています。タウタンパク質が異常に集まると、アルツハイマー病や他のタウオパチーと呼ばれる神経変性疾患の発症および進行に関与します。
タウタンパクといえばアルツハイマーですね。
認知症に効く薬
塩酸ドネペジル: アルツハイマー型認知症の進行を遅らせるために最も広く使用されている薬であり、近年ではレビー小体型認知症の治療にも使用されています。
他には、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンなどがあります。
アセチルコリンエステラーゼの阻害やNMDA受容体の阻害を通じて、神経伝達物質のバランスを改善し、認知機能を保持または改善することを目的としています
レビー小体型認知症は、アルツハイマー病とパーキンソン病の特徴を持つ複雑な病態であり、症状は認知障害、運動障害、視覚幻覚などが含まれます。
現在、レビー小体型認知症の治療には確立された治療法は限られており、主に症状の管理と患者の生活の質の改善に焦点を当てています。
アンブロキソールが本当に効くなら画期的ですね!
アンブロキソールと認知症に関する論文
2020年の論文を、貼り付けときます。
効果はありそう。
今現在進行形でstudyされていそうな論文、
まとめ
アンブロキソールについて記載しました。
私の中では去痰薬のイメージしかないのですが、今後は認知症の薬として脚光を浴びるかもしれません。
現在進行形で研究が進んでおり、続報に期待したいと思います。
コメント