従来から上記の血清マーカーは、低栄養の指標と考えられています。
しかし少し前の論文では、低栄養のマーカーになり得ず、炎症を反映すると記載されています。
結構ちゃんとした論文がそうアナウンスしてるんで、結構びっくりしました。
というのも、個人的には栄養の指標とは考えてないですが、昔から言われているし、無視はしてない感じです。
検索しても、アルブミンは栄養の指標というのはよく見られると思います。
アルブミンで言えば、正常値は3.5g/dl以上ですが、重症感染や血管炎などの強い炎症がある場合はアルブミンが2台に低下ことはよく見られますね。
昨日まで元気だった方が、突然の感染症になったとしてもすぐさま著明な低栄養状態になるわけではないですからね。
従来は栄養のマーカーと思われていましたが、炎症のマーカーとしての認識の方が良いかもしれませんね。
大事なことだけ見ていきます。
アルブミンについて
アルブミンとは、肝臓に生成されるタンパク質のことで、血漿中の割合は60%もあり、最も多いタンパクです。
役割としては簡単に2つあります。
膠質浸透圧の維持と物質との結合および輸送です。
●膠質浸透圧に関して
膠質浸透圧を維持することで、血管内の水分保持に関係しています。
シンプルにこれを覚えといたらいいです。
アルブミンの著明な低下は、水分の血管内から外への漏出を招くことになります。
その結果、あまりにも低下があると全身の浮腫をきたします。
●物質の結合について
アルブミンは、亜鉛などの微量元素や酵素などと結合しています。
結合することで、これらの物質を目的部位へ輸送しています。
減量したときの簡易補充式というか、期待上昇度の計算は、
投与アルブミン量(g)/体重になります。
10kgに10g入れると, 10/10ですので、1g/dlの上昇が推定されます。
50kgに10g入れると、10/50ですので、0.2g/dlの上昇が得られるはずということになります。
ちゃんとした上記式を求めるためにちゃんとした計算式がありますので、確認ください。
個人の経験上は大体これの通りくらいの上昇を認めます。
浮腫が強く全身状態が悪い場合、術後などの場合は、膠質浸透圧の上昇での血管内への水分の引き込みを期待し、時々アルブミン補充されることはあります。
これはあくまでも栄養としてではなく、膠質浸透圧の是正です。
正常値は、3.5g/dl以上になります。
血中半減期が3週間前後になりますので、一般的には3週間前の栄養状態を示唆すると考えられています。
プレアルブミンについて
トランスサイレチンとも呼ばれます。
血清蛋白の電気泳動法でアルブミンの前に出現してくるのでプレアルブミンと呼ばれているらしいです。
役割としての名称はトランスサイレチンの方がしっくりきます。
甲状腺ホルモンのサイロキシンやビタミンAの輸送として働くからです。
トランスサイレチンは、trans、という接頭語がついていますね。
プレアルブミンは、肝臓で生成されます。
半減期はおよそ24時間前後です。
正常値は20-40mg/dl程度です。
レチノール結合タンパク質とは
ビタミンAを運んでくれるタンパク質です。ビタミンAは別名レチノールです。
生成場所は肝臓で、代謝される場所は腎臓です。
半減期が16時間前後と短いため、栄養状態の管理に使われた経緯があります。
肝臓で生成されているので肝障害をきたせば、低栄養でもなく低下します。
正常値は概ね2.5~7.5mg/dl程度と思われます。
炎症性マーカーとしての認識
引用を載せますが、完全に栄養マーカーとしては使用するべきではないと書いてあります。
確かに極端な栄養障害でない限り、純粋な栄養のみでそこまで著明なアルブミン低下はないと思います。
腎臓や腸管による喪失や、慢性炎症や急性炎症の方がはるかに、アルブミン値は下がっている印象はあります。
serum albumin and prealbumin are not components of currently accepted definitions of malnutrition.
Serum albumin and prealbumin do not serve as valid proxy measures of total body protein or total muscle mass and should not be used as nutrition markers.
The serum concentrations of albumin and prealbumin decline in the presence of inflammation, regardless of underlying nutrition status.
Serum albumin and prealbumin declines must be recognized as inflammatory markers associated with “nutrition risk” in the context of nutrition assessment rather than with malnutrition perse. Nutrition risk is broadly defined as the risk of developing malnutrition and/or poor clinical outcomes if nutrition support is not provided.
The role of serum albumin and prealbumin in monitoring delivery and efficacy of nutrition support remains undefined. Their normalization may indicate the resolution of inflammation, the reduction of nutrition risk, a transition to anabolism, or potentially lower calorie and protein requirements.
Nutrition in Clinical Practice Volume 36 Number 1
February 2021 22–28
タンパクの喪失はどれくらいで起きるのか?
ある論文では、健康な患者のアルブミンとプレアルブミンの値は6週間以上の飢餓の後、BMIが12未満にならないと低下しないとの報告があります。
6週間以上も飢餓しないとアルブミンは下がらない可能性があるなんて、確かに栄養関係ない気もしてきますよね。
Serum albumin concentration was not correlated with the lean mass, appendicular skeletal muscle mass, or body cell mass indexes. Serum albumin concentration was, however, correlated with outcome score
Nutrition, 2011-02-01, Volume 27, Issue 2, Pages 165-169
まとめ
アルブミン、プレアルブミン、レチノール結合タンパクについて確認しました。
栄養の指標と考えれていましたが、炎症のマーカーとして考えた方が良いかもしれませんね。
もちろん、低栄養でも少しは下がりそうですが、
低栄養の状態が、慢性炎症があって食欲がないなどから惹起されているだけかもしれません。
以上参考になれば幸いです。
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