mRNAワクチンは“がん免疫ブースター”になり得るのか?

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まず、私は反ワクチンでもなければ、推進一辺倒でもない

医療者として、できる限りデータを基準に判断する立場と考えている

メリットとデメリットの天秤である

ワクチンに関してはまさに今流行りの中道である

その視点で読んで、純粋に「面白い」と思った論文がある。

Nature に掲載された
“SARS-CoV-2 mRNA vaccines sensitize tumours to immune checkpoint blockade”
という研究だ。

この論文は、mRNAワクチン接種後に起こる自然免疫反応を詳細に解析し、それが免疫チェックポイント阻害薬(ICI)への腫瘍の感受性を高める可能性を示した。

生存率が改善(臨床データ)

NSCLCでは:

ワクチン接種群

→ 中央値OS 37.3ヶ月

非接種群

→ 20.6ヶ月

 HR ≈ 0.5(死亡リスク約半減)

ガチ効果あり

ワクチンを「感染予防」ではなく、免疫環境を一時的に変える装置として捉えた点が新しいと感じた

IFNαが280倍?

論文で目を引くのは、Ⅰ型インターフェロン(IFNα)が接種後に平均約280倍に上昇したという数字である。

まず、IFNαは健康な状態では血中にほとんど存在しない。つまりベースラインが極めて低い。

ほぼゼロに近い値から少し上がるだけで、「倍率」は大きく見える。

お金で例えるなら、財布に1円しか入っていない状態から280円になれば280倍だが、
資産家になったわけではない。

このIFNα上昇は一過性であり、数日以内に基準値へ戻る。慢性炎症ではないので、免疫が短時間立ち上がり、きちんと収束する。生理的な自然免疫の反応範囲内と解釈できる。

しかし280倍はなんだか多いなと思う、ベースの絶対値がどれくらいかわからんから

もともと1pg/mlとかやと、280pg/mlなのでかなりの量な気もする

でも、研究では最終的な血漿濃度は1〜10 pg/mlの間だったとのこと

普通の風邪レベル程度らしい

確かにcovid19のワクチン打った時はいつもより倦怠感があったから、そこそこのIFNが出ていたのであろうと考える

出やすい人?ベースが高い人?が打つと確かにサイトカンストームではないが、結構な炎症を惹起する可能性もありそうである・・・

これは個体差であろう

そもそもインターフェロンとは何か

インターフェロンは、ウイルス感染時に最初に立ち上がるシグナル分子。

Ⅰ型インターフェロン(IFNα/β)は、

  • 抗ウイルス遺伝子を誘導し
  • 抗原提示を高め
  • NK細胞やCD8陽性T細胞を活性化する

論文ではこの反応を
“viraemia-like cytokine response(ウイルス血症様のサイトカイン反応)”
と表現している。
ウイルスが血液中に存在するという意味ではなくて、免疫の立ち上がり方が、ウイルス感染時のパターンに似ている、ということだ。

なぜそれが「がん免疫」とつながるのか

Ⅰ型インターフェロンは、

  • 樹状細胞を活性化し
  • 腫瘍抗原の提示を促進し
  • T細胞のプライミングを強化する

ウイルスに対抗する仕組みは、腫瘍監視にも使われているのである。

インターフェロン刺激は同時に腫瘍細胞のPD-L1発現を上昇させ、
免疫ブレーキを強める。

そこで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場する。

論文では、

  • ワクチン単独では腫瘍縮小効果は限定的
  • しかしICIと併用すると抗腫瘍効果が増強

というマウスデータが示されている。

ICI治療中にmRNAワクチンを接種していた群で生存期間が延びていた可能性が報告された。もちろん無作為化試験ではない。

「ウイルス血症様」がなぜ癌に効くのかを簡便に

  • システム全体に「ウイルス感染が起きたぞ!」というアラート(viraemia-like response)が鳴り響くことで、腫瘍内にいた怠慢な樹状細胞やマクロファージ(APC)が活性化
  • T細胞の動員: 活性化したAPCが腫瘍抗原を拾い上げ、リンパ節で強力にCD8 T細胞を教育
  • 腫瘍の変化: この反応によって、本来「冷たい(免疫が効かない)」はずの腫瘍が「熱い(免疫が攻撃可能な)」状態に変わるとのこと

では、発がん率は下がるのか?

これには言及していない

この論文は、

  • 一過性のIFNサージ
  • ICIとの相乗効果

を示したものであり、

一般集団における長期的な発がん率低下を証明したものではない。

免疫は強ければ強いほど良いわけではない。慢性的な炎症はむしろ発がんリスクになる。

「免疫を刺激すればがんは減る」という単純な図式では語れない

最後に 

感染と腫瘍は、一見無関係に見える二つは、免疫という軸で繋がっていると感じる

しかし、感染様刺激が腫瘍免疫を動かすという発想は昔からあるらしい

mRNAワクチンは、がん予防にまで広がるのか?あるいは治療補助にとどまるのか?

「抗体製造装置」としてだけではない可能性があるので、続報に期待しています

以上参考になれば幸いです

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