コーヒーは心房細動(AF)の再発を減らす?【DECAF Trial 2025】

健康・減量

はじめに:カフェインは健康に良いのか、悪いのか

コーヒーや紅茶といったカフェイン飲料は、世界中で最も広く飲まれている嗜好品の一つ

しかしその一方で、「身体に良いのか、悪いのか」という議論は何十年も続いてきた

健康にいいと信じて、私自身は毎朝飲んでいる

ある時代には
「カフェインは心臓に負担をかける」「不整脈を誘発する」
と警告され、別の時代には
「長寿に寄与する」「抗酸化作用が強い」
と称賛される

まさに“健康情報の両極端”がぶつかり合ってきた歴史がある

おそらくいい部分もあれば悪い部分もあるし良い人悪い人がいると思われる

それは全ての薬に言えることかもしれない

なぜ、こんなに議論が割れるのか?

① カフェインには急性作用と慢性作用がある

  • 急性:交感神経刺激・血圧上昇・心拍増加
  • 慢性:耐性形成・血圧の正常化・抗炎症・代謝改善

過去の研究の多くが「観察研究」だった

昔の研究はコーヒーを飲む人と飲まない人を比較してしまう

しかし飲酒・喫煙・運動量・収入など「背景因子」がバラバラで、
“コーヒーの本当の影響”を評価するのが極めて難しい

コーヒー飲む人の方が喫煙率が多ければ交絡因子となり、正確な比較は困難である

③ 医学界には長年「カフェイン=不整脈」という固定観念があった

患者が動悸を感じる → コーヒーをやめるよう指導、
という反応的な医療文化が半世紀近く続いてきた。

その固定観念は覆られるのか?
なんの偏見もなしに考えたら、カフェインで頻脈になれば心臓には悪影響な気もするが・・・

最近のDECAF trialから見ていく

ただ飲み過ぎはダメである

 DECAF Trial 

Coffeeていう身近な材料やけど立派にJAMAやもんな・・・

■ 研究デザイン

  • 対象:持続性AFで除細動予定の患者200名
  • 期間:6ヶ月
  • 群分け
    • コーヒー継続群(1杯/日以上のカフェイン入り)
    • 完全禁コーヒー群(カフェイン・デカフェを含むコーヒー全禁止)

■ 結果

  • コーヒー群:再発 47%
  • 禁止群:再発 64%
  • HR 0.61(再発 39%減)

「1杯/日程度のカフェイン入りコーヒーは、AF再発をむしろ減らす」

統計処理全部ぶっ飛ばして、結果だけを見れば非常にインパクトのある結果でした。

おもろい

 なぜコーヒーでAFが減るのか?

考えられるメカニズムは複数

  1. アデノシン受容体(A1/A2a)遮断 → 抗不整脈作用
    • アデノシンはAFを誘発しやすい
    • コーヒーのカフェインがその作用をブロック
  2. 抗炎症作用(クロロゲン酸)
    • AFは炎症と強く関連
    • コーヒーはCRP・IL-6を抑える方向に働く可能性
  3. 身体活動量の増加
    • 別のRCT(CRAVE Trial)では
      → コーヒー摂取で1日+1000歩
    • 運動はAF再発を確実に減らす
  4. 利尿効果による血圧低下

DECAF Trial は「コーヒー禁止」という指導の妥当性に大きな疑問を投げかけています。

“コーヒーは不整脈を誘発する”は本当か?

Coffee Consumption and Incident Tachyarrhythmias: Reported Behavior, Mendelian Randomization, and Their Interactionsから

UK Biobank 39万人を解析した研究では、

  • コーヒー摂取が多いほど
    不整脈発症リスクは低下
  • 心房細動・心室性不整脈ともに増加せず

「コーヒーで不整脈が増える」という常識は科学的に支持されない

冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)との関連

Chieng D, et al. Coffee subtypes and cardiovascular outcomes: UK Biobank. Eur J Prev Cardiol. 2022から

 1〜3杯/日で心筋梗塞・狭心症リスクが最も低い

  • 軽度〜中等量は一貫してリスク低下
  • 過度の摂取でも有害性は明確でない
  • 動脈硬化の進展を抑える可能性(抗酸化・抗炎症)

NEJMが示した死亡率との驚くべきデータ

NEJM 2012(約40万人)は現代の“コーヒー再評価”の原点か・・・

Association of Coffee Drinking with Total and Cause-Specific Mortalityから

■ コーヒー摂取量と死亡率

  • コーヒーを多く飲む人ほど
    総死亡率が低い
  • 心血管疾患
  • 呼吸器疾患
  • 感染症

まとめ 

コーヒーは“心臓に悪い”どころか、有益である可能性が高い

不整脈→ 増える証拠はほぼなく、むしろAF再発を減らす可能性

心血管疾患全般→ 1〜3杯/日で最もリスクが低い

全死亡→ 大規模研究で一貫して低下

 コーヒーを“禁止”すべき人は?

  • 飲むと明らかに動悸を感じる人
  • 高カフェインエナジードリンクを大量摂取する人
  • 睡眠障害が悪化する人

カフェイン中毒気味な人は避けた方がいいとは思う

 安全な目安量

  • 1〜3杯/日が最もエビデンス的に安定
  • デカフェでも健康効果は期待できる

今回の DECAF Trial と一連の研究により、
「心臓のためにコーヒーをやめなさい」 という指導は、もはや科学的に根拠が薄いかもしれない

心臓においてであっての評価ですので、そのほかの効果の論文もあるので興味があれば調べてみてください

以上参考になれば幸いです

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