感染症の迅速診断を目的としたフィルムアレイ(FilmArray)は、近年多くの医療現場で注目を集めています
特に救急外来や重症患者の診断において、その迅速性と正確性は大いに評価されています
学会や論文での報告も多くなってきた印象です
何より培養する時間がなく短時間なのがメリットであり、開業医でも設置しているところはある
本記事では、フィルムアレイの具体的な利点とその導入におけるコスト面、さらに考慮すべきデメリットについても詳しく解説します。
フィルムアレイとは?
フィルムアレイは、PCR技術をベースにした分子診断装置で、複数の病原体を同時に迅速に検出することが可能です。主に呼吸器感染症、胃腸感染症、髄膜炎、脳炎などの診断に使用されており、1時間以内に結果が得られるため、早期治療の開始を可能にします
主なパネルと検出可能な病原体
フィルムアレイは用途に応じていくつかのパネルが提供されています。以下に代表的なものを挙げます
- 呼吸器パネル:インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスなど、主に呼吸器感染症を引き起こす病原体を特定
- 胃腸パネル:ノロウイルス、ロタウイルス、サルモネラ菌、カンピロバクターなど、急性胃腸炎の原因となる病原体を特定
- 血流感染症パネル:敗血症の診断をサポートするため、血液培養から細菌や真菌を特定
- 髄膜炎・脳炎パネル:髄膜炎や脳炎の原因となるウイルスや細菌を迅速に特定
フィルムアレイのメリット
- 迅速かつ正確な診断:フィルムアレイは、従来の培養検査やPCR検査よりも短時間で結果を提供できます。これにより、患者の診断と治療が迅速に行われ、特に救急医療の現場で有用です
- 包括的な病原体検出:一度の検査で複数の病原体を検出できるため、非特異的な症状を持つ患者に対しても正確な診断が可能です。例えば、呼吸器パネルではRSウイルスだけでなく、インフルエンザや他のウイルスも同時に特定できます
- 操作の簡便さ:専用のカートリッジにサンプルをセットし、装置に挿入するだけで自動的に検査が進行するため、特別な技術が不要です。これにより、小規模な医療施設でも簡単に導入できます。
- 感染症管理の向上:迅速な診断により、適切な感染管理策を迅速に講じることができ、院内感染の防止や治療の最適化が図れます
フィルムアレイのデメリット
- コストの問題:フィルムアレイ装置の初期導入費用は高額であり、さらに専用カートリッジのランニングコストもかかります。各カートリッジの価格は1万円から数万円程度であり、頻繁な検査が必要な場合、費用がかさむ可能性があります
- 残存遺伝物質による偽陽性のリスク:フィルムアレイは高感度であり、感染が治癒した後でも残存する遺伝物質を検出することがあります。これにより、感染が終息している患者でも陽性結果が出ることがあり、臨床的な解釈が必要です
- 保険適用の制限:日本では、フィルムアレイによる検査が保険適用されるかどうかは検査の種類や状況によります。全ての検査が保険適用となるわけではなく、自己負担となる場合もあるため、患者への費用負担を考慮する必要があります
コストの考慮
フィルムアレイの導入には、装置の初期費用、検査カートリッジのランニングコスト、そしてメンテナンス費用が必要です。特にランニングコストは、検査頻度が高い施設では無視できないものとなるため、導入前にコストパフォーマンスを慎重に評価する必要があります。
ちなみに、RSウイルスや新型コロナウイルスの抗原検査キットの価格は以下です
RSウイルス抗原検査キットの価格:
- 1回分あたりの価格:約1,000円から2,500円程度
新型コロナウイルス抗原検査キットの価格
- 1回分あたりの価格:約1,000円から2,500円程度
気になることとしては、
鼻に何回も検査キットを突っ込まれるわずらしさは確かに減りそう
抗菌薬の使用が減ったらいいけど、どうなのか
明らかに入院も不要な上気道炎にやるのはコスト的にいかがなものかと思う
気道病変で入院する患者さんには入院時に取ることは有用かもと思う、抗菌薬の使用の有無の判断
フィルムアレイの論文
The Biofire Filmarray Pneumonia Plus panel for management of lower respiratory tract infection in mechanically-ventilated patients in the COVID-19 era: a diagnostic and cost-benefit evaluation
Biofire Filmarray Pneumonia PlusパネルがCOVID-19パンデミックの中で、特に人工呼吸器を使用している患者の下気道感染症(LRTI)の管理においてどのような診断的および経済的利点を持つかを評価しています
診断精度:
Filmarray Pneumonia Plusパネルは、従来の培養法よりも迅速かつ広範な病原体の検出が可能であり、特に多剤耐性菌や共感染の特定において有効であることが示されました
コストベネフィット:
Filmarrayパネルの導入は、初期費用が高いものの、迅速な診断による入院期間の短縮や抗生物質使用の削減により、長期的には費用対効果が高いことが示唆されました。
有効そうやな
まとめ
フィルムアレイは、迅速かつ正確な感染症診断を可能にし、医療現場での感染症管理に大きく貢献しています。その包括的な病原体検出能力と操作の簡便さにより、特に緊急性の高い感染症の診断において重要な役割を果たします
一方で、コストや保険適用の問題、偽陽性のリスクなども考慮すべき点です。医療機関は、フィルムアレイの利点とコストを総合的に評価し、導入の適切性を判断することが求められます。
以上参考になれば幸いです
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