GLP1ダイエットでの肥満対策が流行っているけど、肥満手術を考えてみる

健康・減量

久しぶりに健康に直結する内容で、記事を書こうと思いました

最近はGLP1内服によるダイエットが取り上げられています

ウゴービは保険適用になっているGLP1薬だったはずです。

調べると保険適応でない人も、自費などで購入しているみたいですね

ウゴービなどのGLP1による肥満への論文は最近、よく散見されます。

副作用も大きくなく痩せることができれば、そりゃ誰もが欲しがりますね

研究結果もpositiveなものが多く、今後も伸びていく分野と思っています

処方しないから、関連株買いたいw

さて、そんな中、肥満に対する手術っていうのも海外ではそれなりに多くしていることを知りました。

今回読んでみたスウェーデンからの論文では、3万の肥満に対する手術をした群とかいう記載があったと思います

10年間くらいの累計と思いますが、それでも結構いるんだという印象です。

海外では結構メジャーなようです

日本では、調べると年間1000件もないくらいですね、海外に比べると少ない

日消誌 2021;118:532―540

極端な肥満の人が少ないからかもしれませんが

GLP1の話はよく聞くけれど、肥満手術はニュースにもなりません

私もけっして痩せてはおらず、肥満気味なので、調べてみました

なぜ肥満は体に良くないのか

好きなものを目一杯食べて、満腹で昼寝する・・・

最高やで

しかし、それを繰り返すと肥満になってしまいます。肥満の影響を考えてみます。

  1. 心血管系の疾患:
    • 高血圧、心筋梗塞、脳卒中など、心血管系の疾患リスクが高まります。肥満は血圧を上昇させ、心臓に負担をかける主要な原因の一つです。
  2. 2型糖尿病:
    • 肥満は2型糖尿病の最も大きなリスクファクターの一つです。体のインスリン利用の効率が悪くなり、血糖値の管理が困難になります。
  3. 呼吸器系の問題:
    • 睡眠時無呼吸症候群や喘息のリスクが増加します。肥満は呼吸の効率を下げ、睡眠中の呼吸障害を引き起こすことがあります。
  4. 関節痛や骨格系の問題:
    • 過剰な体重は関節に大きな負担をかけ、膝や腰などの関節痛の原因となります。また、骨格系の変形や変性を促進する可能性があります。
  5. がんのリスク増加:
    • 肥満は、乳がん、大腸がん、子宮がんなど、特定の種類のがんのリスクを高めると考えられています。
  6. 精神的な影響:
    • 肥満は、自己評価の低下、うつ病、不安症といった精神的健康問題のリスクを高める可能性があります。
  7. 生殖系の問題:
    • 肥満は女性の生殖能力に悪影響を及ぼすことがあり、妊娠合併症のリスクを増加させます。

あかんことしか書いてないですね

メカニズムも調べましょう

心血管イベントや糖尿病になぜなりやすいのか?

心血管イベント

  1. インスリン抵抗性:
    • 肥満はインスリン抵抗性を引き起こすことがあります。インスリンは血糖を細胞内に取り込むための重要なホルモンですが、肥満によって細胞がインスリンの作用に対して鈍感になり、血糖値が正常に管理されなくなります。この状態は高血糖を引き起こし、長期的には血管損傷や心血管疾患のリスクを高めます。
  2. 高血圧:
    • 肥満は血管の機能に影響を及ぼし、体内の炎症を促進することで血圧を上昇させます。また、腎機能に影響を与え、体内の塩分と水分のバランスを崩し、それが高血圧の原因となります。
  3. 脂質異常症:
    • 肥満はLDL(悪玉コレステロール)の上昇やHDL(善玉コレステロール)の低下を引き起こすことがあります。これにより、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増加します。
  4. 炎症と血栓形成:
    • 肥満は体内の炎症マーカーの上昇に関連しています。炎症は動脈の内壁にダメージを与え、血栓の形成を促すことがあります。血栓が動脈を塞ぐと、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことがあります。

あとは体格が大きいと、その分血液量が増えますので、心臓にとっては容量負荷になりますね。さらに高血圧で後負荷も高いと、心臓に対しては厳しい環境です

2型糖尿病

  1. インスリン抵抗性:
    • 既述の通り、肥満はインスリン抵抗性の主要な原因の一つです。インスリン抵抗性が慢性的になると、膵臓は血糖を正常化しようとしてより多くのインスリンを分泌しますが、最終的にはその機能が低下します。この結果、血糖値が持続的に高くなり、2型糖尿病が発症します。
  2. β細胞機能の低下:
    • インスリンは膵臓のβ細胞によって生産されますが、インスリン抵抗性の状態ではこれらの細胞が過剰に活動し、最終的に機能不全に陥ります。β細胞の機能が低下すると、十分なインスリンの生産ができなくなり、血糖値の調節が困難になります。

3.脂肪組織からのシグナル:肥満によって増加した脂肪組織は、単なるエネルギー貯蔵の場ではなく、多くの生理活性物質やホルモン(アディポサイトカインと呼ばれる)を分泌する内分泌器官です。これらの物質はインスリンの作用に影響を与え、インスリン抵抗性を高めることがあります。特に、脂肪組織から分泌される炎症性サイトカインは、インスリンシグナルの妨害とインスリン抵抗性の発生に寄与します。

  1. 脂肪酸の増加:肥満により体内の自由脂肪酸レベルが上昇します。これらの脂肪酸は肝臓へ流れ込み、インスリンの効果を阻害し、糖新生を促進します。また、筋肉での脂肪酸の増加は、インスリンメディエーテッドのグルコースの取り込みを阻害し、インスリン抵抗性をさらに悪化させます。
  1. エネルギー過剰:カロリー摂取量がエネルギー消費量を上回ると、過剰なエネルギーは脂肪として貯蔵されます。この過剰なエネルギー貯蔵は、脂肪細胞の肥大化と脂肪組織の機能不全につながり、インスリン抵抗性と糖代謝の異常を引き起こします。

これらのメカニズムは、肥満が心血管疾患や2型糖尿病の重要なリスクファクターとなる理由を説明しています。

肥満症の手術とは

代表的な肥満治療手術には以下のようなものがあります。

  1. 胃バンド手術(Laparoscopic Adjustable Gastric Banding, LAGB):胃の上部に調整可能なバンドを装着し、食事の量を減らすことで体重減少を促します。比較的単純で逆転可能な手術方法ですが、他の手術方法に比べて体重減少効果は小さいことがあります。
  1. 胃バイパス手術(Roux-en-Y Gastric Bypass, RYGB):胃の一部を迂回し、小腸の一部に直接接続することで食事の吸収を減らします。体重減少の効果は大きいですが、栄養吸収不良を引き起こすリスクがあります。
  1. スリーブ状胃切除手術(Sleeve Gastrectomy):胃の約75%を切除し、残った胃をスリーブ(袖)のような形状にします。胃のサイズを小さくすることで食事の量を減らし、体重減少を促します。
  1. 二重消化管バイパス手術(Biliopancreatic Diversion with Duodenal Switch, BPD/DS):スリーブ状胃切除手術と似ていますが、小腸の大部分を迂回するため、より強力な体重減少効果があります。栄養不足のリスクが高いため、他の手段で体重が減らない重度の肥満患者に対してのみ推奨されます。

これらの手術は、生活習慣の変更や薬物療法が効果がなかった場合、または重度の肥満(BMIが40以上、または35以上で肥満関連の健康問題がある場合)の患者に基本推奨されています

重度肥満の人が対象になっていますね。

さて次は論文を見てみます

肥満手術後の心不全のリスク

Surgical treatment of obesity and excess risk of developing heart failure in a controlled cohort studyという論文から

This cohort study included all patients aged 20–65 years with a first ever registered principal diagnosis of obesity in the Swedish Patient Register in 2001–2013. These patients were matched by age, sex, and region with two population controls from the general Swedish population without obesity diagnosis. The obesity cohort was divided into two groups: 27 882 patients who had undergone gastric bypass surgery within 2 years of obesity diagnosis and 39 564 patients who had not undergone such surgery. These groups were compared with 55 149 and 78 004 matched population controls, respectively. Cox regression provided hazard ratios (HR) with 95% confidence intervals (CI), adjusted for age, education, and sex. During follow-up (maximum 10 years, median 4.4 years, and interquartile range 2.5–7.2 years), 1884 participants were hospitalized for heart failure. Compared with population controls, gastric bypass patients had no excess risk of heart failure during the initial 0–≤4 years of follow-up (HR = 1.35 [95% CI = 0.96–1.91]) but a marked increased risk during the final >4–10 years of follow-up (HR = 3.28 [95% CI = 2.25–4.77]). Non-operated patients with obesity had a marked excess risk of heart failure throughout the study period compared with population controls.

Surgical treatment of obesity and excess risk of developing heart failure in a controlled cohort study

このコホート研究は、2001年から2013年にスウェーデンの患者登録簿に初めて肥満の主診断として登録された20歳から65歳の患者全員を対象としました。

これらの患者は、肥満の診断を受けていない一般スウェーデン人口から、年齢、性別、地域で二人の人口コントロールとマッチングされました。

肥満コホートは、肥満診断から2年以内に胃バイパス手術を受けた27,882人の患者と、そのような手術を受けていない39,564人の患者の二つのグループに分けられました。これらのグループは、それぞれ55,149人と78,004人のマッチングされた人口コントロールと比較されました。

コックス回帰を用いて、年齢、教育、性別で調整したハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が提供されました。追跡調査(最大10年、中央値4.4年、四分位範囲2.5~7.2年)の間に、1,884人の参加者が心不全で入院しました。人口コントロールと比較して、胃バイパス患者は追跡調査の最初の0~≤4年間に心不全の過剰なリスクはありませんでした(HR = 1.35 [95% CI = 0.96–1.91])が、追跡の最後の>4~10年間には顕著なリスク増加が見られました(HR = 3.28 [95% CI = 2.25–4.77])

手術を受けていない肥満患者は、研究期間を通じて人口コントロールと比較して心不全の顕著な過剰リスクがありました。

ということで4年間は問題ないけど、それ以降はリスクは上がっているという結論になります。

Surgical treatment of obesity and excess risk of developing heart failure in a controlled cohort study

手術した最初の数年が一番効果があって、それ以降はどうしても少しずつ体重増加はしてしまうようです・・・

しかし、非手術群に比べると良いデータですね

肥満手術後と2型糖尿病のリスク

Incidence of type 2 diabetes after gastric by-pass surgery in a Swedish controlled cohort studyという論文から

During a median follow-up of 4.3 years (interquartile range [IQR] 2.4, 7.0 years), 3792 (11.7%) non- operated patients with obesity developed type 2 diabetes (incidence rate 22.8/1000 person-years, 95% CI 22.1–23.6) compared to 394 (1.7%) among gastric bypass patients (incidence rate 4.0/1000 person-years, 95% CI 3.6–4.5). The latter incidence was comparable to population controls (3.5/1000 person-years, 95% CI 3.2–3.8). Gastric bypass patients had 85% lower risk of diabetes compared to non-operated patients with obesity during the first six years of follow-up (HR 0.15; 95% CI 0.13–0.17).

Conclusion: Gastric bypass surgery for obesity seems to reduce the risk of developing type 2 diabetes to levels similar to that of the general population during the first six years of follow-up but not thereafter.

Incidence of type 2 diabetes after gastric by-pass surgery in a Swedish controlled cohort study

追跡調査の中央値4.3年(四分位範囲[IQR] 2.4, 7.0年)の間に、手術を受けていない肥満患者3792人(11.7%)が2型糖尿病を発症しました(発症率は1000人年あたり22.8、95%信頼区間22.1–23.6)これに対し、胃バイパス手術を受けた患者394人(1.7%)の発症率は1000人年あたり4.0(95%信頼区間3.6–4.5)でした。

後者の発症率は、人口コントロール群(1000人年あたり3.5、95%信頼区間3.2–3.8)と比較して同等でした。胃バイパス手術を受けた患者は、追跡の最初の6年間で手術を受けていない肥満患者と比較して糖尿病のリスクが85%低かった(HR 0.15; 95% CI 0.13–0.17)。 

結論:肥満のための胃バイパス手術は、追跡の最初の6年間に一般人口と同様のレベルに2型糖尿病の発症リスクを減少させるようですが、その後はそうではありません。

Incidence of type 2 diabetes after gastric by-pass surgery in a Swedish controlled cohort study

顕著な結果の図ですね。

結果の追加ですが、6年以降はわずかにnormalに比べて発症率が高くなっています。

これも先ほどの心不全の時と一緒で、考察にも書かれていますが、胃バイパス手術を受けた患者は、通常、手術後最初の1年間に大幅な体重減少を経験し、その後の数年間でいくらかの体重を回復します。

これが、2型糖尿病の発生率の時間的差異を説明する可能性があるとされています。

まとめ

GLP1ダイエットが日本では流行していますが、海外では今回の論文のネタである肥満手術もメジャーになっています。

極端な肥満の方には、手術+GLP1とかもstudyされていくかもしれませんね

GLP1 VS 肥満手術のstudyもそのうちありそう・・・

手術であれ、なんであれ、体重コントロールが新血管イベントや糖尿病の発症率を下げているのは明確です

薬に頼るとお金もかかりますし、日々、節制をしたいと改めて思いました。

以上参考になれば幸いです

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