敗血症に続発する頻脈に対するランジオロールの最近の研究は途中で打ち切りになってた

健康・減量

Landiolol and Organ Failure in Patients With Septic Shock The STRESS-L Randomized Clinical Trialです。

大きいrandomised studyで途中打ち切りってあんまり聞いたことがない気がします。

あることにはあるでしょうけど、打ち切りでもJAMAに乗るくらいですから、結構なインパクトですね。

さて、渦中の薬剤ですが、ランジオロール。

ランジオロールとは日本産のベータブロッカーですね。国産なので頑張って欲しいです。

自動能亢進の心房性不整脈にはいい対象なのかと思いますが。

敗血症にはどうなんでしょうか?

長時間作用のβブロッカーが敗血症に死亡率を低下させるとの報告がありますが・・・

Continuing chronic beta-blockade in the acute phase of severe sepsis and septic shock is associated with decreased mortality rates up to 90 daysという論文です。

今回のstudyの前に日本からの論文でも敗血症での頻脈性不整脈でランジオロールを使い、脈拍数を有意さをもって下げたと報告があります。後述します。

今回の試験は日本以外の国でやったようですね。

頻脈が心臓に良くないのはわかるけれども、敗血症で頻脈になっているのは末梢組織の酸素需要が上がっている、もしくは心臓収縮力が落ちており、心拍数で代償している結果なはず。

それで頻脈を抑制したたら組織の需要に応えれなくなるだけではと思ったのですが。

頻脈がAF やAFLなどの組織の需要関係なく起こる頻脈には有効とは思います。

頻脈すぎると拡張する時間がないので、ある程度のレートコントロールは効く感じがします。

ちょっと論文を調べてみました。まずランジオロールの説明からします。

ランジオロールについて

日本の製薬会社である小野薬品工業が開発したこの薬は、特に日本国内で広く使用されており、日本での臨床研究や試験が多く行われています。

ランジオロール(Landiolol)は、超短時間作用型のβ1選択的ブロッカー(β遮断薬)です

これは、心臓のβ1アドレナリン受容体に選択的に作用し、心拍数を減少させることで心臓の酸素消費を抑えます。

この効果は心筋梗塞や不整脈などの心臓疾患、特に心拍数の高い状態を管理するのに有用です。

ランジオロールの主な特徴は、作用の発現が迅速で、効果が短時間で消失する点です。これにより、患者の心拍数を細かく調節しやすく、特に集中治療室(ICU)などで急性期の心拍数管理に用いられます。ランディオロールはβ1受容体に高い選択性を持つため、気管支収縮や末梢血管抵抗の増加など、β2受容体に関連する副作用が比較的少ないのが特徴です。

打ち切りの理由は?

a planned 340 participants, 126 (37%) were enrolled (mean age, 55.6 years [95% CI, 52.7 to 58.5 years]; 58.7% male). The mean (SD) SOFA score in the landiolol group was 8.8 (3.9) compared with 8.1 (3.2) in the standard care group (mean difference [MD], 0.75 [95% CI, −0.49 to 2.0]; P = .24). Mortality at day 28 after randomization in the landiolol group was 37.1% (23 of 62) and 25.4% (16 of 63) in the standard care group (absolute difference, 11.7% [95% CI, −4.4% to 27.8%]; P = .16). Mortality at day 90 after randomization was 43.5% (27 of 62) in the landiolol group and 28.6% (18 of 63) in the standard care group (absolute difference, 15% [95% CI, −1.7% to 31.6%]; P = .08). There were no differences in the number of patients having at least one adverse event.

Landiolol and Organ Failure in Patients With Septic Shock The STRESS-L Randomized Clinical Trial

簡単に訳すと、

参加者は340名予定されており、そのうち126名(37%)が登録。

(ランジオロール群の平均 (SD) SOFA スコアは 8.8 (3.9) であったのに対し、標準治療群では 8.1 (3.2) 。

無作為化後28日目の死亡率は、ランジオロール群では37.1%(62人中23人)、標準治療群では25.4%(63人中16人)(絶対差、11.7%[95%CI、−4.4%~27.8%])。 P = 0.16)。 

無作為化後90日目の死亡率は、ランジオロール群で43.5%(62人中27人)、標準治療群では28.6%(63人中18人)であった(絶対差、15%[95%CI、−1.7%~31.6%])。 P = .08)。

死亡率について明確な有意差はないものの28,90日ともランジオロール郡の方が髙そうです。

現時点では126/340でのデータですので、これから良い方向に変わることもありますが、むしろ90日後の死亡率に有意さが出てしまう可能性もありますし。

そこが打ち切りの理由でしょうかね。

論文見てもHR上昇の原因がsinus tachyが多そうです。AFは各々8人ずつくらい。

以前の日本の方の論文を見てみましょう。

J-Land 3S

Efficacy and safety of landiolol, an ultra-short-acting β1-selective antagonist, for treatment of sepsis-related tachyarrhythmia (J-Land 3S): a multicentre, open-label, randomised controlled trialです。

Between Jan 16, 2018 and Apr 22, 2019, 151 patients were randomly assigned, 76 to the landiolol group and 75 to the control group. A significantly larger proportion of patients in the landiolol group had a heart rate of 60–94 bpm 24 h after randomisation than in the control group (55% [41 of 75] vs 33% [25 of 75]), with a between-group difference of 23·1% (95% CI 7·1–37·5; p=0·0031). Adverse events were observed in 49 (64%) of 77 patients in the landiolol group and in 44 (59%) of 74 in the control group, with serious adverse events (including adverse events leading to death) in nine (12%) of 77 and eight (11%) of 74 patients. Serious adverse events related to landiolol occurred in five (6%) of 77 patients, including blood pressure decreases in three patients (4%) and cardiac arrest, heart rate decrease, and ejection fraction decrease occurred in one patient each (1%).

Efficacy and safety of landiolol, an ultra-short-acting β1-selective antagonist, for treatment of sepsis-related tachyarrhythmia (J-Land 3S): a multicentre, open-label, randomised controlled trial

151人の患者がランダムに割り当てられ、76人がランジオロール群、75人が対照群に割り当てられた。 

ランジオロール群では、無作為化24時間後の心拍数が60~94bpmだった患者の割合が対照群よりも有意に高かった(55%[75人中41人]対33%[75人中25人])。 群間差は 23.1% (95% CI 7.1–37.5; p=0.0031)。 

ランジオロール群では77名中49名(64%)、対照群では74名中44名(59%)に有害事象が観察され、重篤な有害事象(死亡につながる有害事象を含む)が9名(12%)に認められた。 

患者 74 名中 77 名と 8 名 (11%)。 ランジオロールに関連する重篤な有害事象は患者 77 名中 5 名 (6%) で発生し、血圧低下が 3 名 (4%) で発生し、心停止、心拍数の低下、駆出率の低下が各 1 名 (1%) で発生しました。

頻脈自体はかなり改善していますが、それの予後であるとかには言及していない感じですかね。頻脈性不整脈の大半がsinus tachy cardiaなんですよね。それでも効果ある報告ですね。

上述しましたがsinus tachy cardiaは心臓の代償反応やから、AF とかAFLのみにしたら効果はもっとありそうなんですが。

ちなみに打ち切りになった試験の方がAFやA F Lの絶対数は少なそうです。

このstudyの結果がいいのはAFLやA Fが多いから? 

わかりません笑

J-land studyとしてAFLやA F の頻脈に対する論文が2014年にありました。

心機能低下しているAFやA F Lに対する薬剤でランジオロールとジゴキシンのどっちがより脈を下げるかの試験です。頻脈の是正をしていますが、これも生存や死亡率などのアウトカムは言及していなさそうです。

まとめ

ランジオロールについての最近の研究を記載しました。

打ち切りって珍しい気がします。

打ち切りになった試験でAFやAFLなどの頻脈性不整脈に限局してstudyしなおすとどういう結果になるのか?気になりますが打ち切りなので仕方ありません。

そこは知りたいですけどね。

結論は前回のものと違い何ともですが、ランジオロールは絶対的に敗血症にいいとは言い難くなってそうですかね。

また後発の論文がそのうち出るでしょう。

以上参考になれば幸いです

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