様々なワクチンが存在しており、日本でも定期接種を行なっています。
本題はGBS髄膜炎に対するワクチンの取り組みです。
日本でも定期ワクチンの普及による小児、成人問わず、大幅に細菌性髄膜炎は減少しました。
しかし症例報告などをみていると、いまだにGBS髄膜炎だけは撲滅できていないようです。
最近の論文で母体にGBSワクチンを投与する論文を読みましたので、GBS髄膜炎や今までのワクチンの歴史を記載したいと思います。
下の画像はミッドジャーニーでワクチンで作成したものです。
GBS髄膜炎とは?
GBS髄膜炎は、溶血性連鎖球菌群B(Group B Streptococcus, GBS)によって引き起こされる重篤な感染症であり、新生児、特に生後3ヶ月未満の乳児における重要な感染症です。
GBSは、90日未満の乳児の中で最も一般的な細菌性髄膜炎の原因であり、母親の消化管および泌尿生殖器系でのGBSのコロニー化が新生児の侵襲性疾患の主なリスク要因とされています
この細菌は、通常、母親から新生児に垂直伝播し、新生児の髄膜炎や敗血症を引き起こす可能性があり、重篤な合併症や死につながる可能性があります。
GBS髄膜炎は水頭症、難聴、失明、および発達障害などの重大な神経学的後遺症を起こす可能性があります。
1990年代後半の分娩時抗生物質予防法の導入により、GBS髄膜炎の負担が減少しましたが、依然として重篤な問題となっています。
髄膜炎の発生率とワクチンの歴史
米国では、小児の細菌性髄膜炎の発生率は、100,000人あたり0.2〜3.7件の範囲にありました。2005年にCDCが子供にMenACWYワクチンを推奨した後、アメリカの髄膜炎の症例は90%減少しました。
MenACWYは髄膜炎菌のワクチンです。日本では定期ではありませんが、アメリカでは定期のようです。
日本では、この論文から引用していますが、
日本では、7価肺炎球菌結合ワクチン (PCV7) の導入後、髄膜炎の発生率が53.6%減少し、さらに13価肺炎球菌結合ワクチン(PCV13) への切り替え後、髄膜炎の発生率は70.2%減少しました。
かなり減少していると思います。
髄膜炎は非常に恐ろしい疾患ですので、髄膜炎の発生率が70%も減少しているなら、上記のワクチンを接種するべき根拠として十分と思います。
ワクチンの簡単な説明もしておきます。
そもそもワクチンとは?
ワクチンは、人や動物の免疫システムを活性化し、特定の感染症に対する免疫を提供するための生物製剤です。
ワクチンは通常、感染症を引き起こす微生物やその成分(例えば、タンパク質や糖)、またはこれらの微生物の無害なバージョンを含んでいます。
ワクチンは、体内に入ると、免疫システムを刺激して、特定の抗体を生成し、記憶免疫細胞を作成します。
これにより、体は将来同じ微生物に感染した場合に、それを迅速かつ効果的に攻撃し、感染を予防または症状を軽減することができます。
免疫システムが本番でより機能するための予行演習みたいなイメージでしょうか。
ちなみに、世界で最初のワクチンは、1796年にエドワード・ジェンナーによって開発されました。彼は、天然痘に対する免疫を提供するために、牛痘ウイルスを使用しました。このワクチンは、現代のワクチンの基盤を築くのに役立っています。
ワクチンの種類
生ワクチン:生ワクチンは、弱体化した(または減毒された)生きた微生物から作られています。例としては、麻疹、風疹、おたふく風邪のワクチンがあります。
不活化ワクチン:不活化ワクチンは、死滅した微生物またはその断片から作られています。例としては、インフルエンザワクチンやポリオワクチンがあります。
サブユニット、再組成、またはポリサッカライドワクチン: これらのワクチンは、微生物の一部(タンパク質、糖、またはタンパク質と糖の組み合わせ)から作られています。例としては、ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンがあります。
メッセンジャーRNA (mRNA) ワクチン: mRNAワクチンは、新しいタイプのワクチンであり、特定のタンパク質をコードする遺伝情報を含んでいます。このタイプのワクチンは、COVID-19の予防に使用されるPfizer-BioNTechおよびModernaワクチンに見られます。
mRNAワクチンはコロナの際にニュースになっていました。
最近では新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発に大きな貢献をしたことでノーベル賞になっていましたね。
GBS髄膜炎は妊婦への予防的抗菌薬で減少したのか?
妊婦におけるGBS髄膜炎の予防には、出産時に抗菌薬予防療法(Intrapartum Antibiotic Prophylaxis, IAP)が広く使用されています。
IAPは、出産時にGBS陽性の女性に抗菌薬を投与することで、新生児の早期発症GBS病のリスクを大幅に減少させることができます。
発生率の減少: IAPの導入により、新生児の早期発症GBS病の発生率が80%減少したという報告もあります。妊婦に35-37週の妊娠時に検査を行い、陽性の場合には出産時にペニシリンの予防投与を行う国では、早期発症病の発生率が著しく減少しています
しかしながら、抗菌薬予防療法の投与は、GBS感染の女性における早期発症GBS病の発生率を大幅に減少させることができますが、ほとんどの場合は出生後に罹患するGBS病の遅発型を予防することはできないとされています。
遅発型の報告も時々見かけます、これを防げるようになればと考えられたのがGBSワクチンなんですね。
GBSワクチンの潜在的な効果の論文
最近の研究では、妊娠中の女性にGBSワクチンを接種することで、新生児のGBS病のリスクを減少させる可能性が示されています。
論文はこれ。
GBS6ワクチンは、妊娠中の女性に接種された後、これらの女性から新生児への抗体の伝達を促進しました。これは侵襲性GBS病のリスクを減少させる可能性があることを示しています。
抗体の伝達:研究は、妊娠中の女性に対するワクチン接種が、新生児に対する侵襲性GBS病のリスクを減少させる可能性があることを示しています。これは、抗体が母親から新生児へ効果的に伝達されるためです。
無害性と効果
このランダム化対照試験では、妊娠中の女性に接種されたワクチンが、新生児の侵襲性GBS病のリスクを減少させたことが示されました。また、ワクチンを受けた患者で見られた有害事象の数には有意な差はありませんでした。
Potential for Maternally Administered Vaccine for Infant Group B Streptococcus
妊娠中の女性にワクチンを接種することで新生児のGBS病のリスクを減少させる可能性があることを示していますね。新生児への抗体の伝達を促進することができればlateでのGBS感染にも効果がある可能性はあり期待大です。
まとめ
ワクチンでかなりの髄膜炎が減少していることは分かりましたが、いまだGBS髄膜炎だけは現在においても度々罹患例があります。
ワクチン接種と抗菌薬予防療法は、妊婦と新生児におけるGBS髄膜炎の予防において効果的な方法の可能性がありますし、これらの予防策は、新生児の生命を救い、将来の健康問題を防ぐ可能性があります。
ワクチンで副作用が出る方もいらっしゃると思いますが、そこはリスクベネフィットかなと思います。
今後の発展の期待しています。
以上参考になれば幸いです。
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