新たな高血圧治療の道: アルドステロン合成阻害薬Lorundrostatの登場

健康・減量

新しい高血圧治療の薬が治験されており、気になったので調べてみました。

高血圧は全世界で数百万人に影響を及ぼす深刻な健康問題であり、その管理は心血管疾患のリスクを軽減し、患者の生活の質を向上させる鍵となります。

近年、高血圧治療の新しい選択肢としてLorundrostatが注目されています。

この薬は、アルドステロン合成酵素を阻害し、アルドステロンの生産を減少させることによって、血圧を効果的に下げる可能性が報告されています。

まず、高血圧が全身にどのような影響があるのか簡単にまず記載します。

高血圧が全身に及ぼす影響

高血圧が初期の段階で症状を示さない可能性があり、多くの人々がそれを持っていることに気付かないためです。

時間が経つにつれて、高血圧は全身に多くの重大な健康問題を引き起こす可能性があります。

高血圧は、動脈硬化を引き起こしますので、動脈壁の厚く、硬く、柔軟性を失わせる可能性があります。

血管というのは全身に大小関わらず存在していますので、臓器も血管からの栄養を受けており、高血圧によって血管が損傷を受けると、各臓器も同じように損傷を受けることになります。

心臓の影響:

冠動脈疾患:高血圧は、心臓への血流を制限する冠動脈の硬化や狭窄を引き起こす可能性があります。冠動脈がブロックされると、心臓の一部が血流を失い、心筋梗塞が発生する可能性があります。心不全:高血圧は、心臓が血液を体全体に効果的にポンプできなくなる心不全を引き起こす可能性があります。

脳の影響:

脳卒中:高血圧は、脳への血流を阻害するか、または脳の血管が破れて出血する可能性があります。認知機能の低下:高血圧は、時間とともに認知機能の低下や認知症を引き起こす可能性があります。

腎臓の影響:

腎臓病:高血圧は、腎臓の血管を損傷し、腎機能を低下させる可能性があります。

眼の影響:

網膜症:高血圧は、眼の網膜の血管を損傷し、視力問題を引き起こす可能性があります。

従来の治療薬を記載した後に今回の薬剤を記載します。

従来の高血圧に対する治療薬

高血圧治療における主な薬物療法はいくつかの異なるクラスの薬剤を含んでおり、それぞれが体内の特定の経路をターゲットにして血圧を管理します。

利尿薬 (Diuretics):

例: ヒドロクロロチアジド、フロセミド

上記の利尿薬は、腎臓での水とナトリウムの再吸収を減少させることにより、体内の余分な水分とナトリウムを排出します。これにより、血容量が減少し、血圧が下がります。

ACE (Angiotensin-Converting Enzyme) 阻害薬:

例: リシノプリルなど

ACE阻害薬は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害し、アンジオテンシンIIという血圧を上げるホルモンの生成を減少させます。

これにより、血管がリラックスし、血圧が下がります。

ARB (Angiotensin II Receptor Blockers):

例: ロサルタンなど

ARBはアンジオテンシンII受容体拮抗薬であり、アンジオテンシンIIの効果をブロックし、血管の収縮を減少させて血圧を下げます。

β遮断薬 (Beta Blockers):

例: メトプロロール、アーチストなど

β遮断薬は、心拍数を減少させて心臓の負荷を減らし、また血管をリラックスさせて血圧を下げる効果があります。

カルシウムチャネルブロッカー (Calcium Channel Blockers):

例: アムロジピン

カルシウムチャネルブロッカーは、カルシウムが心臓と血管の平滑筋細胞に入るのをブロックし、これにより血管がリラックスし、血圧が下がります。

これらの内服を単剤、もしくは併用して血圧をコントロールすることになるのですが、本態性高血圧、腎血管性高血圧などは併用しても高血圧のコントロールができないこともしばしばあります。

Lorundrostatの働き

Lorundrostatはアルドステロンの生産を抑制することにより、体内の水分とナトリウムのバランスを調整し、結果として血圧を下げる可能性があります。

これは特に、肥満、代謝症候群、および閉塞性睡眠時無呼吸を含む特定の健康状態を持つ患者において重要であり、これらの条件は通常、高血圧の重要な要因とされています​。

アルドステロンの作用と血圧高値になるメカニズム

アルドステロンは、人体の血圧と液体のバランスを制御する重要なホルモンであり、その異常な高値は高血圧を引き起こす可能性があります。以下に、アルドステロンの高値が高血圧を引き起こす主なメカニズムについて説明します。

ナトリウムと水の再吸収:

アルドステロンは、腎臓の細管でナトリウムの再吸収を促進します。ナトリウムが再吸収されると、水も一緒に再吸収され、これが血液の容量を増加させ、結果的に血圧を上昇させます。

カリウム排泄の促進:

アルドステロンはまた、カリウムの排泄を促進します。カリウムとナトリウムのバランスは、細胞の電気活動と心臓のリズムに影響を与え、これがさらに血圧の調節に影響を与える可能性があります。

血管の収縮:

アルドステロンは、血管の平滑筋細胞を刺激して収縮させる可能性があり、これにより血管の抵抗が増加し、血圧が上昇します。

血管のリモデリング:

長期的なアルドステロンの過剰は、血管の構造的変化やリモデリングを引き起こす可能性があり、これが血管の硬化や弾力性の低下を引き起こし、血圧をさらに上昇させます。

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活動:

アルドステロンは、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の一部であり、この系は血圧の調節に中心的な役割を果たします。アルドステロンの高値は、この系の過剰な活動を示し、血圧の上昇を引き起こす可能性があります。

Lorundrostatの臨床試験の結果

最近のTarget-HTN試験では、Lorundrostatは抑制されたレニン活性を持つ患者、特に治療抵抗性高血圧を持つ患者において、安全かつ効果的に血圧を下げることが示されました。

この試験では、Lorundrostatの効果を評価するために、2つの患者群が用いられました。この結果より、Lorundrostatが将来的に高血圧治療の新しい選択肢となる可能性を示しています​

2021年7月から2022年6月までの間に、200人の参加者が無作為に割り当てられ、最終的なフォローアップは2022年9月に行われました。抑制されたPRA(プラズマレニン活性)を持つ参加者において、8週間の治療後、lorundrostatの100mg、50mg、および12.5mg 1日1回投与、およびプラセボにより、オフィスでの収縮期血圧の変化がそれぞれ-14.1、-13.2、-6.9、および-4.1 mm Hgが観察されました。1日2回の25mgおよび12.5mgのlorundrostatを受けた個人での収縮期血圧の減少はそれぞれ-10.1および-13.8 mm Hgでした。収縮期血圧におけるプラセボと治療の間の最小二乗平均差は、50mgの1日1回の投与に対して-9.6 mm Hg(90% CI、-15.8から-3.4 mm Hg; P= .01)および100mg毎日に対して-7.8 mm Hg(90% CI、-14.1から-1.5 mm Hg; P= .04)でした。抑制されていないPRAを持つ参加者の中で、lorundrostatの100mg 1日1回投与により、収縮期血圧が11.4 mm Hg(SD、2.5 mm Hg)減少し、これは同じ用量を受け取る抑制されたPRAを持つ参加者の間の血圧低下と同様でした。6人の参加者が、用量の減少または薬の中止で補正された6.0 mmol/L以上の血清カリウムの増加を経験しました。コルチゾール不足の事例は発生していませんでした。

JAMA

副作用としての髙カリウムもゼロではなさそうですね。

Lorundrostatの利点

Lorundrostatの最も注目すべき利点の1つは、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のような他の薬剤に関連する副作用なしに血圧を下げる可能性があることです。

これは、Lorundrostatがアルドステロン合成酵素を阻害し、ミネラルコルチコイド受容体をブロックするのではなく、アルドステロンの生産を抑制することによって達成されます​。

Lorundrostatとスピロノラクトンの違い

MRAの代表としてはスピロノラクトンでしょうか。違いを記載します。

Lorundrostatとスピロノラクトンは、アルドステロンの影響をターゲットにして高血圧を治療するための2つの異なる薬剤であり、それぞれが異なる作用機序を有しています。

Lorundrostat: Lorundrostatは、アルドステロン合成酵素を阻害することによりアルドステロンの生産を減少させる新しいクラスの薬剤です​1​。

スピロノラクトン: 一方、スピロノラクトンはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であり、アルドステロンの受容体をブロックし、その活動を抑制します。

副作用:

スピロノラクトンは、ミネラルコルチコイド受容体をブロックすることにより血圧を下げますが、副作用(特に高カリウム血症)のリスクがあります。

Lorundrostatは、アルドステロン合成酵素を阻害することにより、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の有害な影響なしに血圧を下げる可能性があります​。

治療の段階:

スピロノラクトンは既に市場で利用可能な薬剤であり、長年にわたり高血圧および心不全の治療に使用されています。Lorundrostatはまだ開発段階にあり、治療抵抗性高血圧の新しい治療選択肢として研究されています​​。

まとめ

高血圧の従来の治療薬と新薬候補のLorundrostatについてまとめてみました。

Lorundrostatは、特に治療抵抗性高血圧を持つ患者にとって有益な選択肢を提供する可能性があり、高血圧の管理における新しい道を示しています。

MRAでもいい気がしますが、MRAよりも血圧下げる可能性があるならアリな気がします。

将来的には高血圧治療の新しい選択肢としての役割を果たす可能性がありますね。

今後の研究結果に期待しています。

以上参考になれば幸いです。

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