脳炎脳症と鑑別を要したメジコン過剰摂取の一例

健康・減量

過去にOD,オーバードーズの症例は何度か経験した気がします。

幻覚、異常行動がはっきりしている症例は今まで経験したことなかったかもしれない。

突然の幻覚、異常行動なんて、脳炎脳症、髄膜炎を想定します。

場合によっては致死的になる疾患ですので、突然の幻覚、異常行動なんて触れ込みで来院するなら、少々ピリッとします。

今回はメジコン過剰摂取の一例でしたが、メジコンって一般的な風邪薬で、薬局で普通に買えます

調べるとメジコンによるODは増えているらしい、今後も一定の割合で遭遇しそうです。

ネット、SNSで情報が溢れてていて、簡単に試せることも弊害かもしれません。

一回調べましたが、何錠飲めばどうなるとか、使用した人のコメントなど、すぐに調べられます

若年でも増えているので、想定していないと脳炎脳症の方に突き進んでいってしまいそうです。

オーバードーズしている事実が分かればいいのですが、全くわからないこともありますので、それが厄介ですね。

同じ医療従事者への注意喚起として、経験した症例を脚色してフィクションとして症例提示しておきます。

症例提示 17歳男性

生来健康な17歳高校生の男性。

1週間前から感冒症状あり。学校から帰宅して家で寝ていた。

両親が帰宅すると突然意味不明なことを言い出した。

家に違う人物がいる。急に歌い出したりといつもと違う状態であった。

会話は何となくできるけれども、噛み合わないことが多い。

発熱はない。体調は悪くなさそうだが、明らかに普段と違うので救急要請となった。

身体所見

発熱なし

意識はあるが、支離滅裂な言葉を行っておりよくわからない。

所々会話は通じるが、正常ではない

頻脈や多呼吸なし。末梢循環は良好

外傷痕や明らかなリストカットの後はなかった。

血液検査上は明らかな炎症反応や電解質異常は認めなかった。

鑑別診断は?方針は?

明らかな意識障害があり脳炎脳症を鑑別にあげた。

抗 NMDA 受容体脳炎?

頭部MRIと腰椎穿刺は必須と考え、まずはMRIを撮像した。

興奮は少なく鎮静なしでMRIは撮像できた。

MRIでは明らかな異常は認めなかった。

その時、自宅にいる兄から連絡があった。

家にメジコンの空き箱が多量にある・・・

MRI撮影後は、来院時より意思疎通はできるようになっており、メジコン を40錠内服したことを告白した。

メジコンのODやがな

よくよく聞けば、学校で嫌なことがあった。

ネットで知り合った友達と一緒にやってみた。

やったらあかんで

メジコン(デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物)とは

メジコンとは咳止め薬として一般的に使用される医薬品です。

デキストロメトルファンは中枢神経系に作用して、咳の中枢を抑制します。

デキストロメトルファンのオーバードーズの症状には、以下のようなものがあります:

  • 錯乱や興奮状態
  • 非常に速いまたは遅い心拍数
  • 血圧の上昇または低下
  • 呼吸困難または呼吸抑制
  • 瞳孔の拡張
  • 痙攣

何錠飲んだらトリップできるか知らないが、ネットでは20−30錠くらいと書いていました。

致死量はどれくらいなのか?

LD50を考えてみます。

LD50(Lethal Dose 50)は、特定の物質が投与された際に半数の被験体が死亡する投与量を指します。LD50は毒性試験において一般的に使用され、物質の毒性を評価するための指標となります。

人間のLD50は分かりませんが、医薬品インタビューホームからは

マウス経口 LD50 165mg/kg

ラット経口 LD50 350mg/kg

となっています。

体重50kgの人間を想定し、上記を参考にするのであれば8250-17500mgくらいがLD50か。

今回40錠であれば一錠15mgなので600mg、オーバドーズのみで致死的にはなりにくそうですが・・・

ふと、セロトニン症候群にならんのか?と思いました。

メジコンのみの症状なのか、セロトニン症候群も併発しているのかまではわからんと思います。

セロトニン症候群は致死的になる可能性もありますし・・・

セロトニン症候群について

デキストロメトルファンは、単独で正常な用量で使用される場合には一般的に安全。

しかし、セロトニン作動性薬との併用や、デキストロメトルファンを含む複数の薬物を同時に摂取すると、セロトニン症候群のリスクが増加する。

セロトニン作動性薬には、抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)、三環系抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、鎮痛剤(トリプタン類)、薬用向精神薬などが含まれます。

これらの薬物とデキストロメトルファンを併用する場合は、十分な注意が必要とされています。

セロトニン症候群の症状には、次のようなものが含まれます

  • 高熱
  • 激しい筋肉の痙攣または硬直
  • 意識の混濁
  • けいれん
  • 頻脈
  • 血圧の変動
  • 高揚感や興奮

ODをする方は、抗不安薬も飲んでることも多いと思うから、いくら致死量でなくても、セロトニン症候群の重症例になる可能性もあり非常に危険と思います。

まとめ

メジコン による多量摂取の症例を認めました。

致死的になりにくいのかもしれませんが、市販薬でいとも簡単に手に入れるのが怖い。

今回は17歳の症例にしていますが、薬局で簡単に購入できることを考えると、もう少し低年齢でもあり得ると思います。

小学校6年くらいからは普通にありそうです。

低年齢であれば最初から薬物中毒は疑わへん気がします。

医療者は低年齢でも意識障害の鑑別に薬物を入れる必要がありますね。

成人は常に想定していると思いますが。

薬物の過剰摂取は非常に危険です、致死量にいかない場合でも抗不安薬とメジコンの組み合わせでセロトニン症候群をきたして重篤化することもあり得ます。

症例報告もちらほらあります。

以上注意喚起になれば幸いです。

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